またゾゾっちゃった どうしようヤバイ
今夜もZOZOTOWNパトロールがやめられない。

昔から洋服が好きだ。もういい大人なのにクローゼットがパンパンで恥ずかしいなと思いつつ、今シーズンの展示会でもたっぷり注文してしまった。ネイビーのバレエシューズとブラックのローファーを買い、シーズン初めのユニクロでカゴいっぱいの買い物も済ませて、「もう春夏物はいらない!」と宣言したのに……。

すると見計らったようなタイミングで友人YからLINEが届く。

「ねえ、花柄のスカートばっかり買っちゃうんだけど(笑)。もう2枚も持ってるのに、また2枚花柄ゾゾっちゃった……本当はストライプとかドットのスカートが欲しいのに!」

「こっちもやらかしたところ。紺と黒のパンツと、ベージュのバレエシューズ、ゾゾっちゃった。もう色々ヤバイよ〜(笑)!」

いい大人の会話とは思えないが、女同士、夜な夜なLINEで語らう内容の半分以上はこの「ゾゾっちゃった どうしようヤバイ」という緊急相談会だ。

「ヤバイ欲しい」「ゾゾっちゃったヤバイ」とZOZOTOWNのページのキャプチャやURLが届き、「いいじゃんいいじゃん、可愛いよ、買って正解! で、私のこれはどうよ?」と、報告しあって自分だけじゃないと安心する。

でもいつからだろうか、服を買うという行為に楽しさだけでなく、背徳感が付きまとうようになったのは……。

「Yってさ、ストレス感じると同じようなもの買う?」

Yはここのところ「彼が冷たい。もしかしたらもうフラれるかも」と悩んでいた。今日はその彼と一緒にいるはずなので「今夜のやらかし」は、彼の横にいるのが落ち着かなかったせいなのかなと思った。

「げっ! それはあるかも。同じものばっか大量に食べちゃったりするし、考えるのが面倒になって思考停止してるのかな。でもあいちゃんだってさ、今日のは完全にそうでしょ?」

あ、そうです。私もです。だって今日は嫌なことがいっぱいあった。仕事のトラブルにプライベートの嫌なこと、それに体調不良と天気の悪さが重なったんだもん、しょうがない……(笑)。

試着しなくていいので、現実を見なくて済む    
「ストレスを感じるとゾゾる」のは私とYだけではない。周りの女子たちにも多く見られる症状だ。

例えば、最近ブランドバッグ2つを同日に購入した友人B。推定25万円ほどの清水買いだ。「一生使えるし、いい買い物だった!」と前向きな購入であることを必死でアピールしていたが、よくよくその日の状況を掘り下げて聞くと、前の夫と今の夫、さらには反抗期入りたての娘の3人を相手に、平行して3つものヘビーな揉め事を抱えていた。

編集者Oも、現場から離れた閑職に左遷になったとき、時間を持て余し通勤電車でも就業中でもZOZOTOWNばかり見ていたという。「欲しいものを片っ端からゾゾったりもした」と言うから、一体いくら買ったのかと聞いたら「その時は、1回の買い物で30万円位だったかな……?」とのこと。その後も転職して気持ちが落ち着くまではかなりやらかしたそうで「やりたい仕事をさせてもらえずストレスが溜まっていたかもしれない」と振り返る。

「ショッピングの女王」として名を馳せた作家の中村うさぎさんもおっしゃっていたとおり、どうやら「女の攻撃性は買い物に出る」らしい。昔から女子には、不安なことやむしゃくしゃすることがあると、衝動買いなど、普段はしないような買い方や買い物に走る傾向が少なからずあるように思う。

さらにアパレル業界のEC化が進んだことで、今では24時間365日、スマホさえあればどこからでも服が買えるようになった。ということは、ストレスの発散のために服を買う女子も増えているのではないだろうか?

精神科医の香山リカ氏は、「ネットショッピングでは、選ぶ、決める、買うというプロセスで自分が完全な主人公になれるのでストレス解消に向いています」という。「試着しなくてもいいので、(服が似合わない、サイズが合わないなどの)現実を見る必要がなく、理想の自分がその服を着ているところを想像できる」からネットショッピングはより気持ちが良いのだそうだ。

また、買おうかどうしようか迷いに迷って、結局ポチるというその葛藤もショッピングに対する依存をより掻き立てるエッセンスとなる。なぜなら「緊張感の高まりと、その解放という落差が快感に繋がる」からだ。

もちろん、ネットショッピングというツールだけが女性の攻撃的な購買欲を煽っているわけではない。様々なモールやブランドがECサイトに凝らすあらゆる工夫もまた、女性の購買欲を刺激してやまない。
なぜ丸の内線OLはゾゾばかり見てるのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55448