ローソンのカフェブランド「MACHIcafe(マチカフェ)」。2017年は約4億杯を販売し、「ブレンドコーヒー」(Sサイズ100円、税込み以下同)や「アイスカフェラテ」(150円)はローソンのPB(プライベートブランド)全体でも上位に入る商品だ。

カフェラテやブレンドコーヒーなど看板商品のみならず、最近ではカフェインレスコーヒーや、通常のMサイズの2杯分の「メガアイスドリンク」、紅茶など他の大手コンビニチェーンにはない商品にも力を入れている。

■「会話の要素が生まれると考えた」

 そんなカフェに対するこだわりは、商品の提供方法にも表われている。セブン‐イレブンやファミリーマートが現場の負担軽減という点を鑑み、客自身にマシンで注がせるセルフ方式を採用しているのに対して、ローソンはあえて店員が注いで直接渡す「手渡し方式」を採っている。

 マチカフェがスタートしたのは2011年。本格的にカフェブランドを展開したのは、大手コンビニチェーンの中でローソンが最も早かった。マチカフェを担当する山田英臣・シニアマーチャンダイザーは、「”みんなと暮らすマチ”を幸せに」という企業理念を体現するために立ち上がったプロジェクトがコーヒーだったと説明する。

「からあげクンなどカウンターフーズの販売以上に、コーヒーは客と会話が生まれる要素が強いのではないかと考えた。目指すところはコンビニコーヒーではなくカフェ。対面販売でお客様との絆を強めることができる」(山田氏)。店内にカフェを作るというコンセプトの下、30〜40代の女性をターゲットに、装飾や黒板POP(店内掲示)、カフェ風の制服といった要素を取り入れ、マチカフェが出来上がった。

 手渡し式は従業員の接客スキルのアップを図ることを狙っている。2012年からはコーヒーの対面販売を通して、商品知識や接客力を向上させた人を本部が認定する「ファンタジスタ」制度を設けた。当初は筆記試験のみだったが、現在はブレンドコーヒーの提供の仕方を審査する実技試験もある。これまでに1万3000人超のファンタジスタが誕生した。

■接客上級者のノウハウを共有

 マチカフェに関しては、さらに上級の制度「グランドファンタジスタ」を設けている。ファンタジスタの中から各地の支店の代表として選出される。加盟店オーナーや各店を巡回するSV(スーパーバイザー)から、「より高い接客ノウハウを持っている」というお墨付きを得た従業員で、約300人しかいない。

 接客ノウハウや黒板POPの書き方など、グランドファンタジスタの取り組みを全社で共有することを目的として、全国大会も行っている。グランドファンタジスタの1人である尾鷲理恵さんは「苦手意識があった接客に自信が持てるようになった。ノウハウは営業日誌を通して他の従業員にも共有するようにしている」と話す。

加盟店人財開発部の平石知子氏は「抽出を待っている間に新商品のオススメをして次の購買につなげることができる。コーヒーだとなぜか家族の話をしてくるお客さんも多い。接客レベルの高いグランドファンタジスタになると、家族構成をもとにおせちの販売など、催事の獲得につなげているという例も聞く」と話す。

 とはいえ、セルフ式と比べてコーヒーの手渡しは従業員の負荷につながっているようにも見える。ローソンの竹増貞信社長も「サービスを支える人手が圧倒的に足りなくなってきている」との認識を示し、会社として自動釣銭機付きレジやタブレットなど業務効率化のための設備の導入を進めている。

 平石氏は「お渡しのスピードは遅く見えているかもしれないが、注文受けたらまずボタンを押してね、といっている。抽出している間に会計をして、終わったころにお渡しができる。セルフよりも対面販売の方がお客様に早く提供できるメリットがあると考えている」と強調する。加盟店によっては、客の希望を聞いて砂糖やミルクを入れて提供しているほか、マシンの活用が難しいシニアには手渡し式が喜ばれるという。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180504-00219222-toyo-bus_all