日本経済新聞 2018/4/26 1:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29835000V20C18A4L83000/
(「千客万来施設」を巡る経緯)
https://www.nikkei.com/content/pic/20180426/96958A9F889DE0EBEAE1E7E2E2E2E0E7E2E6E0E2E3EA9EEAE1E2E2E2-DSXZZO2984216025042018000000-PB1-2.png
にぎわい創出に期待される千客万来施設の完成イメージ(東京都提供)
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 豊洲市場の集客施設「千客万来施設(千客)」の先行きに不透明感が高まっている。東京都は事業者に
事業継続の是非を25日までに回答するよう求めていたが、事業者は「現段階では判断できない」とした。
今後の展開次第では事業者の再公募になる可能性もくすぶる。10月の市場開場後も長期間、
集客機能がない状態が続く公算が大きい。

 都は25日、関係局長会議を開き、千客の事業者、温浴施設運営の万葉倶楽部(神奈川県小田原市)からの
反応を提示した。築地の再開発計画が明らかにならないと判断ができないとの回答が来たと明らかにした。

 小池百合子知事は会議終了後、記者団に「真摯に対応を重ねてきた。かなり具体的に条件を詰めてきた」
とこれまでの都としての取り組みを強調。長谷川明副知事を万葉に派遣し、さらに説得する考えを示した。

 小池知事が築地市場の跡地に「食のテーマパーク」をつくるとの構想を2017年6月に表明したことをきっかけに
反発を強めている万葉。都側も4月に示した築地の再開発計画で千客と築地の施設を両立させると強調し、
理解を求めていた。それでもなお万葉の不信感は強く、今回の回答留保に至った。万葉は25日、
築地再開発をめぐる小池知事の発言で事業の大前提が変わったとして、知事に謝罪を求めた。

 都は万葉に事業を継続してもらいたい考えで、引き続き交渉を粘る。ただ万葉が最終的に撤退を決めた場合には
波乱が避けられない。

 まず豊洲市場が立地する江東区の反応だ。江東区は交通機関の整備、安全と並び、集客施設の設置を
市場受け入れの3条件の1つに掲げてきた。江東区の山崎孝明区長は17日の記者会見で「新たな展開を模索すべき」と述べ、
受け入れの再考に含みを持たせた。都と万葉との交渉が膠着していることへの江東区議会の反発は厳しい。
市場の移転に向け、都はより丁寧な説明が必要になる。

 一方、新たな事業者の公募が必要になれば、千客開業までの道のりはより遠くなる。当初は14年に事業者を公募。
すし店経営の喜代村(東京・中央)と大和ハウス工業が決まっていたが、15年に両社が相次ぎ辞退した。
再公募の末、16年に万葉に決まったが、その後の移転延期や築地再開発計画により、現在の混乱に至っている。

 すでに現時点でも開業は10月の市場開場はもちろん、20年の東京五輪・パラリンピックにも間に合わない。
再公募となれば、さらに数カ月から数年単位で開業が遠のく。

 千客の建設予定地は「環状2号線の整備が予定され、銀座にも近く、訪日客も見込める好立地」(都関係者)。
事業者には大きな魅力だ。ただ様々なトラブルに見舞われた案件との見方も否定できない。
再公募しても手を挙げるのは予期せぬリスクやコストを受け入れられる体力のある企業に限られそうで、
問題の解決は道筋が見えない。