サイトの閲覧を強制遮断する「サイトブロッキング」を巡る議論が沸騰している。政府は出版社など権利保持者の許可なくコンテンツをネットで配布する「海賊版サイト」に適用すべく法整備に乗り出すが、通信内容の解析が必要なことから反対意見も多い。一方、出版社は遮断を歓迎している。コンテンツ業界を守るためのサイト遮断は是か非か。

「被害額は月額数億円だ」。ある大手出版社では、好調だった漫画の売上高が昨秋に急に鈍り始めたという。いぶかしんだ担当者がネットを検索したところ、海賊版サイトに行き着いた。一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構によると、2017年9月から18年2月の著作権者側の被害額は計4000億円以上だという。

ネット上の海賊版サイトは黎明(れいめい)期から無数に存在していたが、ある大手出版社の幹部は「16年末から正規の電子版に見劣りしない海賊版の配信が始まった」と打ち明ける。

17年5月上旬に突然閉鎖したある海賊版サイトのトップページでは「新着タイトル」「一般コミック」などに漫画が分類されている。正式な発売前の週刊漫画誌も読める。サイト内の検索機能を使えば、瞬時に人気漫画を探せるため「公式サイトだと勘違いしていた」(都内の30代男性)人も少なくない。

今月上旬に閲覧ができなくなった別の海賊版サイトは、5000作品以上の人気漫画のほか、ベストセラーの小説や写真集を掲載。月間の閲覧件数は1億8千万回を超えたとされる。

■法整備へ動く

被害の拡大を受けて、政府も重い腰を上げた。13日に開かれた知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で、海賊版サイトの閲覧を強制遮断する処分に法的根拠を与え、民間業者の対応を促すことを決めた。

19年の通常国会に関連法案を提出する。海賊版サイトのリンクを貼り付けて利用者を誘導する「リーチサイト」を刑事罰の対象とする関連法案も同国会までに提出する。

特に悪質なサイトとして海外の「漫画村」や「AniTube(アニチューブ)!」「MioMio(ミオミオ)」を明示した。当面はこの3サイトに限り、緊急避難措置として接続業者が閲覧を遮断することが適当とした。同様の悪質なサイトができた際は、政府が事業者や有識者でつくる協議体を設けて対応を検討する。

海外に設置されたサーバーで海賊版を配布している場合、国内法が及ばず著作権侵害の実態があっても日本が警察権を行使できない場合が多い。また多くの海賊版サイトが「コンテンツを提供しているのは善意の第三者で、我々は置き場所を提供しているだけ」という論法で「合法」を訴えている。
以下ソース
2018/4/16 6:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29373740T10C18A4000000/