武田薬品工業は28日、アイルランドの製薬大手シャイアーのM&A(合併・買収)を検討していることを明らかにした。「初期かつ予備調査の段階」で、同社の取締役会に接触していないと説明している。世界の製薬業界では有望な新薬候補の獲得を目的に大型再編が続いており、海外勢との競争をにらみ水面下の動きが活発になっている。

武田は「海外メディアの報道を受け(買収を含めた協力関係を模索しているという)声明文を米国で出したことは事実。ただ、検討は初期の段階で複数検討しているなかの一つにすぎない」としている。シャイアーは「武田から打診は受けていない」とのコメントを出した。

 シャイアーの売上高は約150億ドル(約1兆6千億円)。希少疾患に強く、血友病や注意欠如・多動性障害(ADHD)、分解酵素の機能不全で体内異常をきたす遺伝性難病「ライソゾーム病」など幅広い分野の治療薬を手掛けている。

 武田はシャイアーと手を組めば、武田の重点領域である「がんや消化器系疾患、神経精神疾患の治療薬を強くできる」と説明。シャイアーの事業基盤である米国市場の開拓にもつながるとみているもようだ。

 武田はこれまで5千億円を超える大型買収を3度手掛け、2017年には米アリアド・ファーマシューティカルズを約6千億円で買収した。今回のM&Aはそれらを大幅に上回ることになる。

 シャイアーは英ロンドン証券取引所に上場し、27日終値ベースの株式時価総額は約280億ポンド(約4兆2千億円)。武田のM&A検討の表明を受け、28日の株価は前日比で一時26%高と急伸した。武田は英国のルールに従い、4月25日のロンドン時間午後5時までに正式に買収提案するか表明するとしている。

 買収が実現するかは不透明だが、仮に全株取得に動けば、16年のソフトバンクグループによる英半導体設計アーム・ホールディングス買収(約3兆3千億円)を上回り、日本企業の海外買収で過去最大になる公算が大きい。

 ただ、08年3月期には8割近くあった自己資本比率は17年3月期に4割程度にまで低下。現在も約1兆円の有利子負債を抱えており、17年に続く大型買収で財務悪化に対する懸念が強まる可能性もある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28711240Y8A320C1EA2000/