ソフトバンクグループの元副社長ニケシュ・アローラ氏が2016年に退任したことを巡り、同社の取締役会が特別調査委員会を立ち上げたことが27日分かった。株主によるアローラ氏らの退任要求に絡んで社内に協力者がいた疑惑が持ち上がり、同氏が退任するに至る経緯を改めて検証するとみられる。

米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は26日、16年ごろにアローラ氏ら2人の取締役の解任を求めた株主らについて、誰が関係していたかをソフトバンクグループが調査し始めたと報じた。社内に関わりのある人物がいるかどうかなども調べているとした。

 インド出身のアローラ氏は米グーグルなどを経て孫正義会長兼社長から「将来の後継候補」として迎えられた。海外企業投資をけん引し、14年度は入社に伴う契約金を含めて165億円と巨額の報酬が話題となった。

 16年1月、米法律事務所ボーイズ・シラー・アンド・フレクスナーはアローラ氏の適性を疑問視する書簡をソフトバンクに送った。同氏はソフトバンクに加わってからも米投資会社の幹部を兼任しており、利益相反行為やインサイダー取引に関与した可能性があると指摘したもようだ。

 これを受けてソフトバンクは取締役会による特別調査委を設立したが、書簡の指摘については問題がないとの結論を出していた。だが孫氏が禅譲を撤回したことでアローラ氏は退任していた。

 孫氏はシリコンバレーなどの人脈を生かして成長企業への投資を次々と主導したアローラ氏をグーグルから後継候補として引き抜いた。その孫氏がたった2年で「社長を続けたい」としただけに、退任に至る経緯には謎が多いとされる。

 カリスマ経営者として知られる孫氏の後任問題は世界の関心を集めている。アローラ氏退任を巡るいざこざが明るみに出れば、孫氏の後継指名レースに影響しかねない。

 今回の調査についてソフトバンクグループの広報室は「取締役会の特別調査委員会はこれらの件について調査をしている。結論を出すに至っておらず、調査が完了するまでコメントを出す予定はない」として詳細の言及を避けた。米紙によると調査委は2月に設立されたが同社は時期を明らかにしていない。

 アローラ氏の退任に不透明な部分があるのか、カリスマの変心だけが理由なのか。ソフトバンクグループには説明責任が求められそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28641610X20C18A3TJ2000/