今年の春闘が終わった。電機や自動車業界ではベア実施企業が相次いだものの、月給ベースでは安倍晋三政権が経済界に要請した「3%の賃上げ」に届かない企業が多い。 日経ビジネス3月12日号の特集「給料はもっと上がる」では、実質賃金が長らく上がらないワケや、賃上げ余力のある会社ランキング、賃金制度改革に取り組む企業などを紹介した。特集に合わせて実施した賃金に関するアンケートを紹介しながら、働く人の賃上げへの意識を見ていく。

 政権が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」は、働く人の賃金を上げることで消費意欲を喚起し、デフレ脱却につなげるのが大きな狙い。そこでアンケートでは賃上げや賞与の引き上げがあった場合の使い道について質問した。
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結果、最も多かった回答は「貯蓄」で49.3%を占めた。年金不安など社会保障の先行きに不透明感があることなどが理由だろう。続いて「食費、生活必需品など日々の生活費」。3位が「子供の教育費、習い事」だった。回答から見る限り、積極的に消費を増やそうという意識はあまり強くはなさそうだ。個人消費を喚起するという政府のもくろみ通りにはいきそうもない姿が浮かび上がる。

「3%」の賃上げは、「適正水準」?
 次に安倍政権が今年の春闘で経済界に要請した「3%の賃上げ」。その水準の評価について尋ねた。
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 半数強が「適当」と回答した。「3%の賃上げ」は水準感としては一定の評価を得ているようだ。一方で3割弱が低すぎる、1割超が高すぎると回答した。大半が適当と考える中、「低すぎる」「高すぎる」それぞれの理由を複数回答で尋ねた。
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「もともとの賃金が少ない」との不満も
 「3%では低すぎる」する理由のトップは、「生活にかかるコストは年々上がっている」。次いで「企業業績は好調で労働者に還元する余力がある」が挙がった。企業の稼ぎが働き手に十分に配分されていないことに対する不満が映し出されている。

 自由回答でも、「株主より労働への分配シフトを行うべき」(52歳、男性、サービス業)、「内部留保に回しすぎ。お金を循環させないと社会も停滞していく」(34歳、女性、情報処理/ソフトウエア/SI・コンサルティング)など労働分配率を高めるよう求める声が上がった。さらに、「もともとの賃金が少ない」(51歳、男性、製造業)、「海外にいくと、日本の労働者の賃金が安すぎると感じる」(49歳、女性、サービス業)と現在の賃金水準が低すぎるとの不満も聞かれる。

「高すぎる」派の理由
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一方、「3%では高すぎる」とする理由で最も多かったのが、「一律に上げるより個人の能力や実績によって差をつけるべき」というもの。年功序列の伝統的な賃金制度ではなく成果主義的な方法を求めている。春闘のあり方にもかかわる。次いで「経済の先行きは不透明で賃上げ余力がない」だった。

 自由回答では「経済が3%も成長していないから」(41歳、男性、情報処理/ソフトウエア/SI/コンサルティング)、「過ぎた賃上げはコスト競争力を下げ、ゆくゆくは雇用調整につながる」(54歳、男性、製造業)など長期的視点で賃上げを抑制すべきとの意見が目立つ。一方で「給料下げてでも人員を増やしてもらいたい」(サービス業)と、賃上げよりも人手不足解消を優先させるべきだとする声も。「経団連会員企業には適当かもしれないが、中小企業には難しい数字」(37歳、女性、サービス業)との意見もあった。

春闘は効果的か
 アンケートでは春闘で賃上げ交渉をすることの効果についても聞いた。「適当な方法」とする回答が「適当でない」を上回った。
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