東レは15日、炭素繊維複合材を開発・生産する蘭テンカーテ・アドバンスト・コンポジット・ホールディング(TACHD)を買収すると発表した。買収額は約1200億円と東レ史上最大となる。テンカーテは炭素繊維に高機能の樹脂を染み込ませた部材で高い技術力と加工ノウハウを持つ。東レは買収を契機に繊維から複合材加工まで一貫して手掛けるグローバルな体制を強化し、競合他社を引き離す。

 TACHDの親会社であるロイヤル・テンカーテから全株式を取得する。2018年後半の買収完了を目指す。同社の18年の売上高見通しは2億ユーロ(260億円)でオランダ、英国、米国と世界に5工場を持ち、航空・宇宙大手の欧州エアバスや中国のレノボなどパソコンメーカー、米ナイキなどスポーツ用品メーカーを最終顧客に持つ。

 15日、都内で記者会見した須賀康雄常務取締役は「コストダウンのために部品を速く成形できる熱可塑性の複合材料の採用は増える。テンカーテと技術開発や拠点を拡充していく」と述べた。

 特に競争力を持つのが、航空機向けの「熱可塑性」といわれる炭素繊維と耐熱性や強度を持つ樹脂との複合材。熱で軟らかくなる材料で、プレスや成型機などで量産部品などに高効率、低コストで加工しやすい特徴を持つ。

 15日の東京株式市場で東レの株価は一時前日比2%安まで下げた。買収額に見合う相乗効果が発揮できるかについて、市場参加者の間には警戒感も浮上したもようだ。

 東レは航空機や自動車などの部品を熱で焼き固めて加工する材料は得意だが、熱可塑複合材の事業は弱く、TACHDと補完関係が築ける。東レの炭素繊維とTACHDが持つ樹脂との組み合わせ技術でも相乗効果を見込む。

 東レの炭素繊維の世界シェアは40%強と首位。14年には炭素繊維大手の米ゾルテックを580億円で買収。近年、米ボーイングの次期大型機「777X」への炭素繊維供給や、「787」向けに独占供給の更新を決めるなど事業を拡大している。イタリアやドイツの複合材関連メーカーを傘下に収めるなど川下分野へも進出している。

 TACHDの買収で成長に弾みをつけ、2020年3月期の炭素繊維複合材料の売上高を2600億円と、18年3月期見通し比約45%引き上げる方針だ。

2018/3/15 10:15 (2018/3/15 12:06更新)
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28148590V10C18A3EAF000/