2019年卒の就職活動が本格化している。就活生にとってこの時期、関門となるのが、選考の申込時に提出を求められるエントリーシート(ES)だ。何をどう書けばいいか。それだけでハウツー本が何冊も出ているし、大学などで対策講座も開かれている。就活探偵団ではとりわけ企業の視点に立って、学生が陥りがちなESの「落とし穴」を指摘したい。

探偵(記者)は今回、ある情報系企業の2019年卒学生向けのESを入手した。A3の横長で、左半分は学生の基本情報を書く欄だ(学歴、資格、特技、卒論のテーマなど)。そして右半分に3つの設問が並ぶ。「自己PR」「志望理由」「学生時代に力を入れたこと」――。書式は企業によっても様々だが、これは典型的なエントリーシートの1つだろう。

「1社ごとに書く内容を変えなくてはいけないのが面倒なんです」

自動車業界を志望しているという早稲田大の男子学生はこう漏らす。

例えば「学生時代に力を入れたこと」は使い回すことができそうだ。しかし、志望動機については、企業ごとに書き分けなくてはならない。

■平均15社以上

男子学生は1社のESを書き上げるのに「2時間かかる」というが、それはあくまで清書にかかる時間だ。内容の検討や推敲(すいこう)も含めれば、実際はもっと時間がかかっているだろう。

リクルートキャリア(東京・千代田)の調査「就職白書2018」によると、18年卒学生は、1人あたり平均15.82社に書類を提出したという。ES作成にかかる負担は相当なものだ。

しかし、ここで心にとめておきたいのは、ESは学生だけでなく、企業にとっても極めて重荷だという点だ。

ある不動産会社は、毎年この時期、5人の採用担当者が3000〜3500通のESに目を通す。ノルマは1人1日20〜30通。むろん他にも仕事はあるので「毎日残業して読んでいる」と悲鳴を上げる。まして万通単位でESが届く人気企業であれば、なおさらだ。

ある大手企業の担当者は、ESの良しあしを分けるポイントとして、「1回読んで理解できるかどうかが一番重要です」と力をこめる。

ESは伏線だらけの推理小説ではない。難解な哲学書でもない。「いったん冒頭に戻って内容を確認する」「文意が分からずに繰り返し読む」。読み手にそんなストレスを強いていないだろうか。

書くスペースが決まっているのもESの特徴のひとつ。限られた分量だけに「エピソードが絞り込まれているものが読みやすい」(日用品大手)。あれもこれもと盛り込み過ぎず、内容は厳選して簡潔にまとめよう。
以下ソース
2018/3/13 6:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27966560Q8A310C1XS5000/