9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅続伸し、前日比440ドル53セント(1.8%)高の2万5335ドル74セントで終えた。上昇幅は2月6日以来ほぼ1カ月ぶり大きさ。2月の米雇用統計が雇用者数の増加と賃金の上昇圧力の落ち着きを示した。米景気回復が続く一方で米利上げは緩やかなペースにとどまるとの見方が強まり、株式への買いが優勢となった。

 ナスダック総合株価指数は6日続伸し、同132.864ポイント(1.8%)高の7560.810と1月26日に付けた過去最高値をほぼ1カ月半ぶりに更新した。アップルやアルファベット(グーグル)など主力株が軒並み上昇した。

 雇用統計で非農業部門の雇用者数の伸びは前月比31万3000人と市場予想(約20万5000人)を大きく上回った。過去分も上方修正された。失業率は横ばいだったが、労働参加率が上昇しており雇用の回復傾向を示したと評価された。

 一方、平均時給の前年同月比の上昇率が前月から縮小し、物価の急速な上昇への警戒感が和らいだ。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを加速するとの見方がやや後退し、株式の買い安心感を誘った。

 米長期金利の指標である10年物国債利回りは一時2.91%に上昇した。ただ、2月に付けた約4年1カ月ぶりの高水準(2.95%)に迫る動きにはならず、金利上昇が株式の投資妙味を薄れさせるとの懸念は強まらなかった。

 トランプ米大統領は8日、北朝鮮の金正恩労働党委員長の要請を受け入れ、5月までに米朝首脳会談に応じる意向を示した。北朝鮮に関連した地政学リスクの軽減が意識されたことも株式の買いを促した。

 業種別S&P500種株価指数では全11種のうち「金融」「資本財・サービス」「IT(情報技術)」など10種が上昇。「電気通信サービス」のみが下げた。

 原油先物相場の上昇を受けて、シェブロンなど石油株が買われた。金融のゴールドマン・サックスも高い。「ブランクファイン最高経営責任者(CEO)が年内にも退任する準備をしている」と報じられ売りに押される場面もあったが、上げて終えた。航空機のボーイングが上昇。CEOがブラジルのエンブラエルとの提携について設備投資や株主還元が脅かされるようなことはしないと表明し、買いを誘った。天然ガス大手への天然ガス田売却で交渉していると伝わったチェサピークエナジーが高い。

 ダウ平均の構成銘柄は、横ばいとなった通信のベライゾン・コミュニケーションズを除く29銘柄が上昇。建機のキャタピラーのほか、ゼネラル・エレクトリック(GE)と金融のJPモルガン・チェースの上げが大きかった。

 一方、前日夕に四半期決算と同時に発表した売上高見通しが市場予想を下回った通信機器のフィニサーが大きく下げた。米玩具販売大手のトイザラスが米国事業を清算する見通しであると米メディアが8日に報じたのを受け、玩具大手のマテルやハズブロに売りが膨らんだ。通信のAT&Tや電気自動車(EV)のテスラが下落した。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASB7IAA05_Q8A310C1000000/