仏ルノーと日産自動車の関係を巡り、水面下の駆け引きが激しくなっている。ロイター通信は7日、日産がフランス政府が保有する約15%のルノー株を買い取る検討に入ったと報じた。仏政府が求める両社の経営統合に向け、資本関係の見直しが具体的に動き始めたとの観測だ。同日、ルノー株が一時、前日比10%値上がりしてその後急落するなど、市場にも混乱が広がった。

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ルノーのCEO続投が決まったゴーン氏(右)と新たにCOOに就任したボロレ氏(左)=ロイター

 日産の首脳は8日朝、日本経済新聞に対し「(ルノー株買い取り交渉は)認識していない」と話した。複数の海外メディアによると、仏政府もルノー株売却についての報道を否定している。ある日産関係者は「完全統合が約束されなければ仏政府は株式を放出しないだろう」と話す。

 相互に出資しアライアンス(連合)を組む日産とルノーの関係を巡っては、かねて仏政府が深化を望んできた。両社への影響力を高めることで、仏国内にあるルノーの工場で日産車を生産し雇用を増やすなど、経済対策に使える余地が広がるからだ。

 日産とルノー、仏政府は日本時間の8日朝時点までで一連の報道内容を認めていない。ただこのところ3者の間で、主導権を巡る駆け引きが加速してきたのは確かだ。

■新COOボロレ氏「仏政府に統合論」

 ルノーは2月、カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)の4年の続投を発表した。筆頭株主の仏政府はゴーン氏の続投を認める条件として、ルノーと日産、三菱自動車を含めた3社連合をゴーン氏に頼らない持続可能な体制にすることを提示していた。3社の会長を務めるゴーン氏も「企業連合が不可逆的なものであることを示したい」と発言するなど、仏政府の意向を無視できない状況に置かれている。

 仏政府は最終的にはルノーと日産の合併を求めているとされる。2月にルノーの最高執行責任者(COO)に就いたティエリー・ボロレ氏は6日、日経新聞のインタビューで「仏政府のなかには合併すべきだと公言する人もいる」と明かした。マクロン仏大統領は経済産業デジタル相だった際も、2社に合併を働きかけていた。

 仏政府にとりルノー株売却は財政赤字の解消の一助となるが、労働者の保護に敏感なフランスでは、政府がルノーへの経営の関与を手放すことに反発が起きる可能性もある。仮にルノー株を売却するにしても、何らかの方法でルノー・日産連合への影響力を残そうとするのは必至だ。

 現時点では資本関係の見直しがすぐに動く可能性は低い。日産とルノー、さらに日仏政府を巻き込んでの水面下の主導権争いが続きそうだ。

(パリ=白石透冴、白石武志)

2018/3/8 12:35
日本経済新聞
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