米アマゾン・ドット・コムはJPモルガン・チェースなどの大手銀行との間で、当座預金口座に似た商品を作り上げ、顧客に提供する計画について協議している。事情を知る関係者が明らかにした。

 関係者によると、協議は依然として初期段階にあり、合意に達しない可能性もある。金融機関との協議では、若者や、銀行口座を持たない顧客にアピールできる商品の開発を目指している。この関係者は最終的な合意がどうなろうとも、アマゾンが銀行になるような動きにつながるわけではないと述べた。

 この計画が実現すれば、通販サイトはもちろん、傘下の高級スーパーのホールフーズ・マーケットから電子書籍端末「キンドル」、人工知能(AI)スピーカー「エコー」まで、アマゾンがさらに日常生活に浸透することになりそうだ。自社ブランドの銀行口座に似た商品を提供することで、アマゾンは金融機関に支払う手数料を削減できるほか、顧客の収入や支出行動など貴重なデータにもアクセスできることになりそうだ。

 事情を知る関係者によると、アマゾンは昨年秋、新しいタイプの当座預金口座を巡り複数の銀行から提案を募った。現在、JPモルガンや米金融大手キャピタル・ワン・ファイナンシャルなどから提示された計画を検討している。顧客が小切手を書けるか、請求書の支払いや米国全土の現金自動預払機(ATM)へのアクセスが可能かなど、どんな商品になるかは明らかになっていない。

 アマゾンが自前の銀行部門を立ち上げた場合は資本要件など規制の対象になり、積極的な事業拡大に制限がかかる可能性が高い。各方面からの強い反発も見込まれる。小売り最大手ウォルマートは10年余り前に一種の銀行免許を取得しようとしたが、さまざまな企業や議員の激しい批判を受けて計画倒れに終わった。

 JPモルガンは既にアマゾンと緊密な関係にある。2002年からアマゾン・ブランドのクレジットカードを発行しているほか、投資会社バークシャー・ハザウェイを含む3社共同で、増加の一途をたどる従業員の医療費削減に取り組んでいる。

 JPモルガンのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、1990年代に幹部としてアマゾンに加わりかけたことがあるという。また、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOの信奉者で、先週の投資家向けイベントではベゾス氏を「家族ぐるみの友人」だと表現した。

 一方、キャピタル・ワンはアマゾンのクラウドコンピューティングサービスを利用している最大規模の銀行だ。

 事情に詳しい関係者らによると、アマゾンは銀行と決済処理事業者に支払う手数料を削減するため以前から金融分野への進出を視野に入れていた。通販サイトの顧客に当座預金口座を提供し、販売した商品の代金を直接引き出せば手数料負担が減る。ただ、この種の取り決めにはあまり前例がない。例えば共同ブランドのクレジットカードよりもはるかに複雑だ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180306-00012881-wsj-bus_all