政府が今国会に提出予定の働き方改革関連法案は、昨年3月に取りまとめられた働き方改革実行計画を法制化したものだ。少子高齢化が進行する中、安倍首相が掲げる「1億総活躍社会の実現」には不可欠だが、迅速に対応できない中小企業にとっては大変な重荷。施行が延期されたところで「焼け石に水」との声も上がっている。

働き方改革関連法案は労働基準法、労働者派遣法、労働安全衛生法など8本の法律の改正案で構成。(1)罰則付きの残業時間の上限規制(2)実際の労働時間に関係なく事前に決めた時間を働いたとみなす「裁量労働制」の対象拡大(3)高収入の専門職の残業規制を外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設(4)正社員と非正規社員の賃金や福利厚生などの不合理な格差をなくす「同一労働同一賃金」の実現−が柱だ。

政府は当初、昨年秋に想定されていた臨時国会に働き方改革関連法案を提出する方針だったが、衆院解散・総選挙の影響で年明けの今国会に法案提出がずれ込んだ。それに伴い、法律の施行時期も延期される。

残業上限規制は、大企業が当初の予定通り平成31年4月だが中小企業は適用を1年延期。同一労働同一賃金の導入も1年遅らせ、大企業と派遣事業者が32年4月、派遣を除く中小企業は33年4月となる。裁量労働制拡大と高プロ創設も1年遅れの32年4月の方向だ。

それでも、中小企業からは「準備時間が足りない」といった不満が根強い。大企業の残業削減のしわ寄せが中小企業に来る可能性は高い。人件費増による経営難やサービス残業の横行、求人票の作成し直しといった業務増も懸念される。政府は法律の施行にあたり中小企業への支援措置も検討しているが、実効性のあるものになるかは不透明だ。(桑原雄尚)
2018.2.23 10:22
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/180223/ecd1802231022004-n1.htm