超円高を警戒する市場関係者が増えてきた。15日は、1ドル=106円30銭付近まで円高が進行。輸出企業からは、「円高を阻止してもらわないと、業績悪化は避けられない」(電機大手)との悲鳴が上がっている。

 ところが、麻生財務相は15日午前の国会で、「特別に介入しなければならないほど、急激な円高でもなければ、円安でもない」と話し、市場関係者のヒンシュクを買った。

「今月2日は1ドル=110円台半ばでした。それが2週間足らずで106円台です。円高は急速に進んだのです。“口先介入”でも何でもして、円高にストップをかけるべきなのに、認識不足の麻生大臣はよりによって『円高ではない』と口にした。投機筋は麻生発言を円高容認ととらえたのです」(市場関係者)

 もはやハイパー円高を覚悟すべきかもしれない。日銀短観によると、大手企業の想定為替レートは109円66銭(2017年度下期)だ。現状は3円の円高水準だが、麻生発言で円高加速の恐れが高まっている。

「昨年の下値(1ドル=107円30銭前後)を超えてしまったので、次の節目はトランプ大統領が大統領選で勝利した直後につけた1ドル=101円20銭付近となります。この水準まで円高が進行しても不思議はありません」(三井住友銀行チーフストラテジストの宇野大介氏)

 大企業の想定レートとは約8円50銭の開きとなる。大和証券が1月下旬に出したリポートによると、「上場企業全体の経常利益は、1円の円高で1716億円のマイナス効果」だ。8円50銭の円高では、1兆4586億円の経常利益が吹っ飛ぶ計算になる。

「米FRBのパウエル新議長は、利上げペースを年3回から4回に引き上げるのではないかと伝わっています。そうなると、金利は一段と上昇し、リスクオフの流れが加速しかねません。安全資産といわれる円はますます買われ、1ドル=100円もあり得るでしょう」(株式アナリストの黒岩泰氏)

 超円高の再来で輸出企業の業績はメタメタになる。企業の好業績が頼みだった株式市場は底値が見えなくなり、日経平均は2万円の攻防を繰り広げることになりそうだ。
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