編集部(以下、編):ビットコインが誕生してから、価格や規制の面でも様々な局面を経て、今仮想通貨に注目が集まっていますが、竹中先生にとってビットコインの印象というのはどのようなものでしたでしょうか?

竹中平蔵氏(以下、竹中):仮想通貨の話が出てきて、印象的だったのは2014年にマウントゴックスが経営破綻です。当時は仮想通貨のような概念が可能だと頭では分かっていましたが、それと一緒に問題が残ったという印象を受けました。

振り返ると、ビットコインが登場したのが2009年。その頃は、まだ第四次産業革命という言葉もありませんでした。

2011年に、ドイツが初めてインダストリー4.0という言葉を使って、人工知能の画期的な技術進歩、第四次産業革命というような概念が広がってきた中でフィンテックというコンセプトも注目されるようになりました。

そのフィンテックの中の重要なパーツとして、この仮想通貨というものが出てくるという流れができつつあったところに、2014年のマウントゴックスがありましたね。

そして2016年に資金決済法が改正されて、仮想通貨が表舞台に出てくることになった。

国のお墨付きが無いおかね
編:仮想通貨は経済の中ではどのような位置づけで考えられるのでしょうか?

竹中:仮想通貨は、基本的には今出てきてるUBERやAirBnB等と基本的には同じだと思います。

今までは、一種の国がお墨付きを与えるようなインフラがないと社会が機能しませんでした。例えば私がどこかに宿泊するとなると旅館業法に基づく旅館やホテルじゃないと安心して泊まれなかったわけですよね。

同じように、通貨決済の手段としても、国や権威やお墨付きが無ければ安心できなかったのだけれども、新しい技術を駆使することによって、そうじゃなくてできるようになった。なので、このような一連の流れで、UberがありAirBnBがあり、同じような意味で仮想通貨があると認識しています。

これからのビットコインに必要なものは
竹中:また、通貨とは何か?を考えるにあたっては3つのポイントがあります。ひとつは価値をはかる尺度。これは500円、1000円といったお金の単位に使われています。

二番目が私たちにとって重要で、決済の手段です。これが充実してくると3つ目の価値を貯蔵する手段になります。例えば、財産を500万持ってます、1000万円持ってますと、日本円で貯蔵してるんですよね。

ドルやユーロで貯蔵することもできますが、北朝鮮の通貨で貯蔵する人はまずいません。理由は信頼です。日本やアメリカの政府に対する信頼があり、決済で充分使えるから貯蔵できる、という流れで先ほどの3つの要件を満たします。

これを考えると今のビットコインの世間での取り上げられ方はやや不健全で、買ったビットコインが10倍になりましたという投機的なものです。

それはそれで、増えたらいいと思いますが、今後発展し続けるためには、やはり決済に使えるしっかりとした基盤が必要です。

竹中:仮想通貨を手に入れようとする人は、必ず「儲かりますか?」って聞くわけですよね。急激に価値が上がってきたことが魅力ですが、そこはやはり問題点でもあります。

つまり、これでものが買えるという実態が常に伴っていないとやはり危ういのではないかと思います。

つまり国がお墨付き与えるわけでも、どっかの企業がお墨付きを与えるわけでもなくて、たくさんの人が実際に使っているという事実が最大の安心の基盤となります。

ただ、そのプロセスで「儲かるから持とう」という人が増えるのは悪いことではありません。

編:投機目的から決済としての普及に変わっていくプロセスはどのような形になると思われますか。

竹中:まず送金ですね。今の日本の銀行はほぼ0円でできるはずの送金に高い手数料をとっています。

帳簿管理のためにお金を使って、それで高額な手数料をとって、貸付先を探せない銀行がなんとか手数料で稼いでるわけですよね?

しかし、帳簿管理をブロックチェーンのような形でできるのならば日本に銀行は必要なくなってしまいます。

私は送金するたびに物凄く腹が立ってしまいます(笑)。
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