NECは23日、量子コンピューター(QC)を2023年までに実用化するため、研究者を増員して開発体制を強化すると発表した。膨大な選択肢から最適な答えを導き出す「組み合わせ最適化問題」の計算を得意とする「量子アニーリング」方式のQCを開発する。

 組み合わせ最適化問題は人工知能(AI)で必要とされる。ただQCは超高速で計算するために量子状態を長時間保つことや、大規模な問題を扱うための計算素子ネットワークの構築が難しいという課題があった。

 NECは量子状態を長く保つため、従来の磁気ではなくマイクロ波を利用し、状態の持続時間に影響するノイズを抑えた。持続時間はマイクロ(マイクロは100万分の1)秒単位と従来の技術より数十倍長くなった。

 量子素子が密接に結合し、ネットワークを拡張して、より多くの計算ができるようになる。こうした技術の基本動作の検証に成功した。

 これまで数人だった研究員を10人規模に拡充し、18年度中に基礎回路を開発する。23年度までに総額数十億円を投じて実機を開発する。計算能力を示す「量子ビット」の数は2000〜3000量子ビットとなる。数百都市での時間ごとの最適な交通ルートを即時に導き出せる性能という。

 同じアニーリング方式のQCで先行するカナダのDウエーブ・システムズの技術は2000量子ビット程度。NECは「同じ量子ビット数でも性能が高くなる」としている。今後は産官学で連携し、10年以内に1万量子ビットを目指す。

 QCはスーパーコンピューターが数千年かけて解く問題を数分で計算する。DNA分析や創薬、自動運転の走行中の効率的なルート選定など産業や生活の様々な場面で革新を起こすと期待されている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26032230T20C18A1X20000/