2018年の春季労使交渉が事実上始まった。経団連の榊原定征会長は22日午前、経団連が開いた労使フォーラムで講演し「(これまで)4年間の賃上げをデフレからの完全脱却につなげるには、経営者が積極経営のギアをチェンジすることが必要だ」と強調した。ギア加速の具体策として、賃上げについては企業に「踏み込んだ対応」を求めた。

労使フォーラムでは主要企業の労使関係者が18年の交渉について議論する。午後には連合の神津里季生会長も講演。23日には経団連と連合のトップ会談を予定する。2月以降に各社の労使交渉が始まり、3月中旬の集中回答日を迎える。

 政府はデフレ脱却に向けて3%の賃上げを経済界に求めている。榊原氏はこうした要請に呼応し、22日の講演でも「長期間にわたる景気回復が続くなか、賃上げに対する社会的な関心は非常に高い」と指摘。ベースアップ(ベア)と定期昇給をあわせた月例賃金、年収ベースでの賃上げを「社会的な期待」と位置づけて企業に積極的な対応を促した。

 榊原氏は、14年4月の消費税率8%への引き上げ時の状況を振り返り「消費の落ち込みが予想をはるかに超えて長引いた」と強調した。19年10月には消費税率10%への引き上げを予定しており「増税の影響をできるだけ小さくするには、今年からの2年間の対応が非常に重要だ」と訴えた。

 経団連は財政再建に向けては計画通りの消費増税が必要だと主張している。榊原氏は賃上げで増税に向けた環境づくりを求めた形だ。

 また榊原氏は19年4月にも導入される残業時間の上限制に向けて「生産性向上や商慣行の見直しなど官民一体となって働き方改革を実行しなければならない」と話した。上限制には経団連も賛同しており「痛ましい過労死や過労自殺を絶対に起こしてはならないという意志だ」と強調した。

 連合の神津会長は22日午後の講演でベアの必要性や、大企業と中小企業の賃金格差の是正を訴える見通しだ。
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