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 シカやイノシシなど野生鳥獣の食肉「ジビエ」が人気だ。高たんぱくで低カロリー、ワインとの相性も抜群。しかし、捕獲してから食肉処理施設に運ぶまでに時間と労力がかかるため、食肉利用は1割程度にとどまる。普及を目指し、日本ジビエ振興協会(長野県茅野市)は、捕獲した動物をその場で枝肉にできる移動式解体処理車(ジビエカー)を長野トヨタ自動車と共同開発した。

 ジビエカーは2トントラックの荷台を改造し、車外洗体エリア、解体室、保冷室などを設けた。獲物は、洗体エリアで泥や汚れを落としてから解体室へ運ばれ、内臓摘出など枝肉にするまでの1次処理を行う。5度以下に保たれた保冷室では、小さいシカで5頭、大きいもので2〜3頭分の保管が可能。製品化するための2次処理施設まで衛生的に運ぶことができる。

 ジビエカーは2016年夏に完成し、これまで全国5カ所で実証実験を重ねてきた。食肉の解体と販売を手掛ける信州富士見高原ファーム(同県富士見町)の戸井口裕貴さんはジビエカーについて、「肉の劣化が早い夏場に特に有効。捕獲範囲が広がり、安定供給にもつながる」と歓迎する。

 一方、高齢の狩猟者からは「ジビエカーでは入れない山道や林道にまで乗り入れられる小型車があれば」との声も上がっていた。捕獲場所まで行ける車が獲物を回収して回る−。この発想を具現化した小型車「ジビエジュニア」が今月にも完成する。

 軽トラックの荷台を改造したジュニアは、獲物を最長20メートル伸びるウインチで捕獲現場から巻き取ることが可能で、冷蔵状態にしてジビエカーや食肉処理施設まで運ぶことができる。長野トヨタ自動車法人営業部の西沢久友部長は「高齢の狩猟者にとっては、60キロ超のシカをジビエカーや軽トラックまで運ぶのは難しい」と開発に込めた思いを話す。2月には、車内で内臓摘出できる設備を加えた「ジビエミニ」も完成する予定だ。

 ジビエカー、ジュニア、ミニの連携で、捕獲しても山中に埋められることの多かった野生鳥獣の肉の利活用率向上が見込まれる。日本ジビエ振興協会の藤木徳彦代表理事は「衛生的に処理できる車によって、安心してジビエを食べてもらえる。どう活用してもらうか、丁寧に説明して普及を図りたい」と期待する。

「ジビエカー」(左)と「ジビエジュニア」(右)の開発に尽力した長野トヨタ自動車の西沢久友部長=2017年12月28日、長野市
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