ことしの日本経済は輸出の増加などが支えになって緩やかに成長を続け、戦後最も長い景気回復を達成する可能性がありますが、賃金の上昇が明確になって多くの人に回復の実感が広がるかどうかが問われる1年になります。

ことしの日本経済は、海外経済が好調で輸出が増加するほか雇用の改善を背景に個人消費も緩やかに回復し、1年を通して成長を続けるという見方が多くなっています。

民間のシンクタンク10社の見通しによりますと、ことし4月からの2018年度のGDP=国内総生産は、物価の変動を除いた実質でプラス1.0%から1.3%と予想しています。
日本経済は5年前の2012年12月から回復局面に入り、仮にことしいっぱい回復が続けば戦後最も長い景気回復を達成する可能性があります。

しかし、企業のもうけや株価上昇の勢いに比べると賃金の伸びは鈍く、経済界を代表する経団連みずからも、ことしの春闘で企業に3%の賃上げを呼びかける方針です。
賃金上昇が明確になって多くの人に回復の実感が広がるかどうかが問われる1年になります。

また世界経済の先行きには不透明感も広がっていて、核・ミサイル開発で挑発を続ける北朝鮮情勢が大きな懸念となっているうえ、欧米の中央銀行で進む金融政策の転換が新興国の経済に打撃を及ぼすおそれがあります。

このため、輸出頼みの成長から、個人消費がけん引して内需の主導で成長できる経済に転換できるかどうかも日本経済の課題になっています。

円相場や株価は
ことしの日本経済の行方にも影響する円相場や株価は、どうなるのでしょうか。
4日からことしの取り引きが始まる東京株式市場については、景気回復が続いて企業業績も堅調に推移するため、ことしも値上がりが続くと予測するところが多くなっています。
証券大手3社の経営トップにことしの日経平均株価がどのくらいの水準に到達する可能性があるか聞いたところ、2万5000円程度から2万7000円程度という見方を示しています。

新年の外国為替市場は1ドル=112円台で取り引きされていますが、民間の主なシンクタンクは2018年度の円相場は1ドル=112円程度から118円台程度と、横ばいか円安の方向で予測しています。
アメリカのFRB=連邦準備制度理事会がことしも利上げを続けていくため、金利の高いドルが買われ、円相場は円安傾向に動きやすいという見方が多くなっています。
円相場の行方は株式市場にも関わるため、ことしも金融市場はアメリカ経済をはじめ世界経済の動向に左右されることになりそうです。
専門家「輸出が引っ張る形で緩やかな成長」
ニッセイ基礎研究所の櫨浩一専務理事は、ことしの日本経済について「輸出が引っ張る形で1%程度の緩やかな成長が続く」という見通しを示しています。
ただ景気の回復を実感できないという声が多いことについては「ここ10年くらい物価の上昇分を除くと賃金はほとんど伸びていない。そういう中で消費税率が引き上げられたり社会保険料が上がって収入が増えたという実感がないためだ」と指摘しました。
このため櫨専務理事は、デフレからの脱却を確実にするためにもことしの春闘で3%を超える賃上げを実現する必要があると指摘しています。

一方、日本経済を取り巻くリスクは海外情勢の不透明感にあると指摘し「海外で何らかのショックが起き、それが波及するリスクが非常に大きい。いちばん心配しているのは、アメリカの外交政策などが引き金になって中東で問題が起きたり北朝鮮との間でトラブルが起こったりして、経済に影響することだ」としています。

また金融政策の正常化に向けて動き始めたアメリカ経済の行方も注目すべきだとしたうえで「アメリカは大規模な金融緩和の後始末をしていくが、どういうことが起こるかは実際やってみなければわからない。アメリカの株価は昨年かなり上昇しており、どこか1つでも予想どおりに行かない時に株価が急落するリスクもある」と指摘しています。

そのうえで櫨専務理事は「日本にはどういう経済が望ましいと考えるのか、アメリカでもヨーロッパでもない日本としてこういう姿の経済にしたい、ということを国民全体で議論することが必要だ」と指摘しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180103/k10011278131000.html