「ひどい不漁に加え魚体は小ぶり、脂の乗りも悪い」と言われる今年のサンマ。全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま、東京都港区)は11日、先月末現在のサンマの水揚げ状況を発表した。全国の水揚げ量は7万3859トンで、「記録が残る限り過去最低」と言われた前年同期の68%にとどまる。水揚げは漁期中盤になってやや回復したが、漁期は今月末まで。すでに操業を切り上げた船もあり、3年連続の不漁は確定的とみられ、影響は缶詰製造など加工業界にも及んでいる。【本間浩昭】

 集計には、昨年から禁漁となったロシア200カイリのサケ・マス流し網漁の代替漁業として、輸出向けに実施されている公海での試験操業分は含まれていない。北海道さんま漁業協会の統計では、1969年の5万2207トンを筆頭に漁獲量が低迷した時期もたびたびあったが、3年連続での不漁は珍しい。

 組合のまとめでは、昨年まで7年連続水揚げ日本一の根室市花咲港は、前年同期比23%減の2万7225トン。3年連続で高値の浜値(港での取引価格)に支えられて、水揚げ金額は約93・2億円で、前年並み。

 同港以外の産地はさらに低調。最終水揚げが前年2位の岩手県大船渡港が同25%減の1万226トンと、かろうじて1万トンの大台を保ったが、他は軒並み3〜5割減。前年同4位の厚岸港は同39%減の6095トン、同7位の釧路港は同48%減の2737トンと振るわない。

 品薄の影響で、浜値の全国平均は1キロ当たり286・4円(前年比34%高)で、豊漁だったころの3〜4倍にはね上がっている。

 漁業情報サービスセンター(東京都中央区)は不漁の背景について、「気候変動や魚種交代、外国船による漁業圧など複数の背景が重なり、資源が長期的に減っており、急激に回復する状況にはなさそう」と分析している。

 記録的な不漁を受けて、水産加工業者も悲鳴を上げる。根室市の水産加工業、マルユウ(高岡一朗社長)は今季、大ぶりの生サンマを原料とした高級缶詰など2種の製造を断念した。

 高級缶詰は6年前、「脂が乗って身も柔らかいサンマの缶詰を消費者に届けよう」と、毎年9月に水揚げされる160グラム級の大型魚を使った「限定缶」(水煮と味付け)として製造。首都圏向けのギフトなどとして販売してきた。

 だが、今年は水揚げ不漁に加え、魚体が例年に比べて極端に小さく、大ぶりな魚でも120〜130グラム。仕入れ価格の上昇に加え、原料の確保がままならず、「限定缶」と130グラム級の魚で製造して来た「定番缶」の製造を断念した。

 「去年あたりから人気が出てきたのに残念」と同社の担当者。在庫は既になく、例年なら小型魚とされている魚を使った新製品の生産を始めており、来年1月ごろから販売する。
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