韓国LGディスプレーは8日、有機ELを使った次世代照明で自動車市場に進出すると発表した。第1弾として独高級車メーカー、ダイムラーと供給契約を結び、照明用の生産能力を従来の30倍に増やして日独自動車大手への供給を目指す方針も示した。車載ランプは有機EL照明市場の中核になるとみられ、日本勢を含む競争が本格化する。

 有機EL照明はプラスチック基板の上に有機物の層を重ね、面全体を光らせる仕組み。薄く軽量で、曲げられる特徴がある。LGがダイムラーから受注したのは、有機EL照明のテールランプとみられる。

 有機EL照明をテールランプやヘッドランプに使えば、複雑な形状のしゃれたデザインを実現しやすい。従来はデザインへのこだわりが強い独BMWや独フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディが独照明大手オスラムから調達し、スポーツカーの一部や特別仕様車に導入している程度だった。

 LGはダイムラーとの取引をテコに、BMWやアウディにも高級車への採用を働きかける。日本メーカーに対してもランプ大手の小糸製作所を通じて供給を目指す。3年以内に年間売上高2000億ウォン(約200億円)の事業に育てる。

 LGは同日、韓国中部の亀尾(グミ)で「第5世代(1.1メートル×1.25メートル)」の基板で月1万5千枚分の有機EL照明の量産ラインを稼働させたことも明らかにした。約1500億ウォン投資した。テレビ向けのラインを転用したもようで、照明向けの生産能力は30倍に増えた。パク・ソンス常務は「曲がる有機EL照明の量産ラインを本格的に稼働させたのはLGだけだ」と強調する。

 LGはテレビ向けの有機ELパネル市場で9割超の世界シェアを握る。同じ財閥の家電メーカーで、車部品も手がけるLG電子と連携しながら、テレビに次いで照明市場でも首位固めを急ぐ。

 世界の有機EL照明市場は2026年に約2500億円になるとの予測がある。日本メーカーではコニカミノルタとパイオニアが共同出資会社を設立して車載市場を開拓する方針で、量販車で20年ごろの採用を目指している。オスラムも増産投資に動くとみられ、日韓欧で成長市場を巡る競争が幕を開ける。

 韓国メーカーでは、サムスン電子がスマートフォン(スマホ)向け有機ELパネルで世界シェア首位。ただ、現時点では照明向けとは距離を置く方針とみられる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24430440Y7A201C1TJ2000/