キヤノンとニコンの2大メーカーの牙城(がじょう)であるプロ向けカメラの市場。そこに今春、ソニーが満を持して参入した。

 今年4月に米ニューヨークで新しいデジタル一眼カメラの発表会が開かれた。商品名「α(アルファ)9」。機械式の部品を極力電子化し、シャッター音も余分な振動もない。コンサートや静寂が必要なスポーツシーンで重宝されそうだ。1秒あたり20コマの連続撮影も可能。プロカメラマンを驚かせ、「ゲームチェンジャーだ」とささやかれた。

 照準は世界のプロが集結する2020年の東京五輪。担当の執行役EVP、石塚茂樹は「プロに評価されなければ本当のカメラブランドになれないと、ずっと思っていた」と話す。

 00年代はソニーのコンパクトデジカメ「サイバーショット」が出荷台数を伸ばしたが、愛好家から「電機屋のカメラ」と揶揄(やゆ)された。一方、世界のコンデジ市場はこの10年で激変。年1億2千万台あった出荷台数は約3千万台に。サイバーショットは台数を追わず、超高画質の高価格路線にシフト。電機屋のカメラからの脱皮もめざした。

 原動力は06年に買収したコニカミノルタのカメラ事業から合流した部隊だ。これを機に一眼市場に参入。だが、ソニーが目の当たりにしたのは、「自らの写真文化への無理解」だった。ソニーは先にビデオカメラ「ハンディカム」を発売。石塚は「動画を切り出せば写真になると思っていたが、写真は一瞬が勝負。決定的な違いがあった」。

 それまで「パソコンを作っている感覚だった」(石塚)。だが一瞬を逃さない操作性にこだわる必要があった。シャッターボタンの配置や感触。開発段階からプロ写真家に助言をもらって作り込むようになった。

 一眼レフカメラはレンズの追加購入や修理で、ユーザーとのつき合いが長い。ソニー側はコニミノ出身者に連れられてカメラ店を回り、職人にレンズの磨き方を教わった。何より教えられたのはカメラへの愛情だ。根っからのカメラ好きの彼らを講師役に、ソニーのメンバーも写真の楽しさを感じ取っていった。

 当時、融合を進めた執行役ビジ…
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