私は今まで、多くのサラリーマンの資産形成にかかわる仕事をしてきました。サラリーマンというのは決まった給料しかもらえませんが、逆に言えば自営業等に比べれば、やっぱり収入も支出も安定しています。

 普通にまじめに働き、給与天引きなどの手段を使ってコツコツと資産形成をしていけば、多くの人は将来、経済的にそれほどひどい状況になることはありません。ところが、「これをやったら、老後破綻に向けて一直線!」という、「まずい一手」があります。それはいったい何かと言うと、「退職金で投資デビュー」です。

■みんな、退職金に対して大いなる勘違いをしている

 サラリーマンの中には、退職金をもらえる人たちが少なからずいます。逆に言えば、会社によって制度は違うので、退職金のない会社もありますし、制度も会社によって少しずつ異なりますから、誰もが同じくらいの退職金をもらえるわけではないのは、言うまでもありません。

 しかしながらアメリカと違って退職金という制度は長い期間にわたって日本に根付いている制度ですから、なじみのある制度であることは間違いないでしょう。

 ところが、多くの人が退職金というものの本質を勘違いしています。それは退職金が長年働いてくれたことに対して会社がくれる“ご褒美”だと思っていることです。

 確かに、そう勘違いするのも無理はありません。

 もともと退職金のルーツは江戸時代の「のれん分け」です。「のれん分け」というのは、長年働いた奉公人に屋号の使用許可といくばくかの開業資金を与えて独立させる仕組みで、これが現代の退職金につながってきているからです。

■「現代の退職金は、給料の後払い」と言える理由

 したがって退職金には、もともと功労報酬的な意味合いがありました。しかしながら、現代の退職金は決して長年働いたことに対するご褒美ではありません。

 退職金の本質、それはひとことで言えば「給料の後払い」です。その証拠に、企業会計上においては、退職金や企業年金のことを「退職給付債務」と言います。そう、給料の後払いだからこそ、会社が社員に対して負っている債務ということになるのです。
以下ソース
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171202-00199369-toyo-bus_all