経団連の二〇一八年の春闘方針案が二十八日、明らかになった。五年連続の賃上げを呼び掛け、ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせて月給の3%引き上げを検討するよう企業に求める。経団連が賃上げ水準を示すのは異例だ。十二月四日に開く会長・副会長会議で方針を固め、来年一月に経営側の春闘の指針となる「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を決定する。

安倍政権は十月の経済財政諮問会議で「3%の賃上げ実現に期待する」と経済界に要請。経団連の榊原定征(さだゆき)会長は「賃上げの勢いを続けていく必要がある」と前向きな構えを見せていた。

連合はベアと定昇を合わせて4%程度の賃上げ要求方針を決める見通し。来年一月に経団連会長と連合会長とのトップ会談を経て、春闘が事実上スタートする。

長時間労働の是正で政府が主導して取り組んでいる働き方改革では従業員の残業代減少が懸念される。経団連の方針案ではその分を賞与の増加や諸手当で補うことを提案。女性の就労促進を促すため、専業主婦世帯などに支払っている配偶者手当の廃止または縮小を訴える。

賃上げ分が社会保険料の支払いに回り、消費拡大に結びついていないという批判も多いため、政府には社会保障費の給付や負担の適正化を求める。

<経労委報告> 経団連の経営労働政策特別委員会が春闘を前に毎年策定している報告書の略称。賃金や人事制度、国内外の経済情勢に関する経営側の認識を総合的に示し、春闘で労働組合と交渉する際の基本方針となる。賃上げだけでなく、雇用や労働政策など働き方全般、社会保障制度などの施策についても経営側の考え方を説明している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201711/CK2017112902000130.html