いよいよ来月から“デモイベント”が始まるスポーツ庁「スニーカー通勤」推奨キャンペーン。本格スタートは来春からとなるが、同じ官民連携プロジェクトの「プレミアムフライデー」の二の舞いにならないか、ちょっと心配だ。

 同キャンペーンは、スニーカーなど歩きやすい服装で通勤し、1日の歩数をこれまでよりプラス1000歩(約10分)、まず1日8000歩(男性平均7194歩、女性6227歩)を目標にしようというもの。中年の運動不足が解消されれば、40兆円を超える国民医療費の抑制にもつながる、なんて淡い期待もあるらしい。

 経済ジャーナリストの岩波拓哉氏は「この手のキャンペーンが定着するかどうかは、クールビズのように余計なお金と手間がかからないことがポイントになります」と、こう続ける。

「クールビズのおかげでネクタイの本数が減り、家計も浮いたから、定着したわけです。対照的にプレ金は『お金を使え』だから、ない袖は振れないとソッポを向かれた。スニーカーはすでに持っているサラリーマンの方が多いでしょうから、プレ金よりは定着する可能性が高いと思います」

スポーツ庁が計画を発表した10月初めは、「ABCマート」や「アシックス」など“関連銘柄”を物色する動きもあるにはあったが、すぐに手が止まった。市場関係者の見方はシビアだ。

「スニーカー通勤はとっくに定着しているともいえます。お上に勧められなくてもやっている人はやっているし、職場のサンダル履きすら許されないお堅い職業の人は、いくら勧められても無理なものは無理。スニーカーから革靴に履き替えるのも面倒です。最近はビジネスシューズに見える革スニーカーも増えましたが、耐久性のあるものは値も張る。キャンペーンのために買い直す人は少数派でしょう」(大手証券会社関係者)

 靴メーカーの関係者ですら懐疑的にこう言う。

「そりゃ売れてほしいですが、革靴=重くて疲れる、だからスニーカー通勤でもっと歩こうという発想自体が古い。軽くて歩きやすい高機能のビジネスシューズは、いくらでもあります」

 そもそも景気が悪いから、気持ちが落ち込み足取りが重くなる。歩く気だって失せる。
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