2017/11/15
ビジネススクール、学ぶ量・質の充実を 若林広二氏 日本大学教授(経営戦略)
私見卓見
https://
www.nikkei.com/article/DGXMZO23454830U7A111C1SHE000/
http://blog.goo.ne.jp/kzunoguchi/e/1c1d5e626d08eab3d229cfa1b87ad1a6
 日本のビジネススクール(経営大学院)は、ビジネスリーダーを育てるという本来の役割を果たせていないようだ。
法科大学院の司法試験の合格率のような明確な指標がなく、深刻に取り沙汰されることが少なかったが、
米国をはじめ国際的な水準から引き離されているようにみえる。
 ビジネススクールに携わっていた経験からも省みると、まず学修時間(授業を含めた学びの時間)に問題がある。
学修時間を単純比較が可能な授業時間に絞ると、修了要件として米国は60単位程度の設定が多いのに対し、
日本は30〜50単位前後と幅がある。
 仮に40単位としても、日本は1単位あたりの授業時間も2〜3割少ないため、米国のおよそ半分の時間で修了できる計算になる。
米国の場合、膨大な量の予習が課せられることも考えると、米国人でさえ2年間学修に専念しないと修了できない仕組みだ。
 次に経営戦略や財務会計、マーケティングといった学修内容の充実度である。日本では、こうしたコア科目の構成比を
総単位数の半分以上に設定し、早期に必修で学ぶカリキュラムになっていないように見受けられる。
米国では、コア科目の成績次第では落第も当たり前だ。会社員時代にミシガン大のビジネススクールで学ぶ機会を得た私を含め、
経験者は留学時代に「嫌になるほど勉強した」と語る。
 米国の場合、激しい競争を乗り越えた修了生の間に同志意識が芽生え、強固なネットワークを形成する。
ビジネススクールのブランド力が高まり、高額の授業料にもかかわらず世界中から志願者を集める一因になっている。
 量・質ともに充実した学修が社会的な評価をもたらす米国に対し、日本の現状は悪循環に陥っているようにみえる。
日本のビジネススクールを修了しても、貸方・借方の仕分けや新製品の売上予測ができないMBA(経営学修士)が誕生してしまう。
 具体的な改善策としては、現状の数倍の学修時間の確保と、カリキュラムのコア科目への集中をあげたい。
オンライン授業による不足時間の補完も検討に値する。ビジネススクールの関係者が、国際標準のモデルをあらためて
認識することが重要だろう。
 ビジネススクールが国際標準を上回ろうとすれば、学生は困難な体験をすることになる。困難な体験と引き換えに、
どんな組織でも力を発揮できるMBAが生まれることを切望する。

2017/11/16付
(経済教室)東芝問題の教訓(上)戦略描く経営のプロ必要
技術力活用へ外資導入も 長内厚 早稲田大学教授
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23504110V11C17A1KE8000/
 日本企業の業績が復調する中で東芝は経営危機にあえいでいる。上場廃止を回避するため、
虎の子の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」を売却することになったが、周知の通り売却交渉自体も二転三転、
いや七転八倒の末、米投資ファンドを軸とする「日米韓連合」と売却交渉を開始することで一応の結末を見た。
ただ、合弁先の米ウエスタンデジタル(WD)との訴訟リスクは残っている。
 東芝メモリ売却の目的は東芝本体の債務超過の…

2017/11/17付
東芝問題の教訓(下)事業の構成 適切に管理を
若林秀樹 東京理科大学教授
経済教室 コラム(経済・政治)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO2355532016112017KE8000/
○誤った事業の「選択と集中」で経営が悪化
○日本企業の強み生かせる事業領域手薄に
○多角化・M&Aでは客観的な分析・判断を

 東芝の経営問題に限らず、あらゆる問題には間接的な「遠因」、直接的な「近因」、そして本当の原因となる「真因」がある。
 東芝問題の遠因は、企業文化や風土の問題もあろう。東芝の場合、戦前は藤山雷太氏、戦後は石坂泰三氏や土光敏夫氏ら、
外部の有力大物経営者に経営再建を委ねる傾向があ…