東芝が9日発表した2017年4〜9月期の連結決算は営業利益が前年同期と比べて2.5倍の2317億円で、過去最高だった。フラッシュメモリー事業がけん引した。米投資ファンドを軸にした日米韓連合への売却で合意済みで、上期として「最後の孝行」を果たした。

今後の焦点は18年3月期末までのメモリー事業売却だ。間に合わないと2期連続の債務超過を避けられず上場廃止になる。9日、平田政善最高財務責任者(CFO)は「(メモリー売却以外の)資本政策を検討している」と述べた。

 営業利益の過去最高更新は1989年4〜9月期以来、28年ぶり。当時はパソコンなどの好調が支えた。今回はメモリーのうちスマートフォン向けなどの販売が増えた。メモリーの事業利益は4倍の2050億円に膨らみ、連結営業利益の9割を稼いだ。

 ただメモリー事業がなければ17年4〜9月期の営業利益は268億円に急減する。売上高も5%増の2兆3862億円が、メモリー事業なしだと約1兆8000億円になる。18年3月期見通しは売上高が前期比2%増の4兆9700億円、営業利益は59%増の4300億円を据え置いた。

 4〜9月期決算は東芝の先行きに2つの課題を示した。まずメモリーを除いた「新生東芝」への懸念だ。4〜9月期はPOS(販売時点情報管理)など小売事業こそ増益だったが、主軸に据える社会インフラやエネルギー、IoT関連の3事業はそろって利益が減った。特にインフラは過去に採算度外視で受注した案件が多い。東芝の財務悪化を理由に、一部企業からは受注が減った。

 メモリーを手放した後の19年3月期は売上高で4兆円、営業利益は数百億円となる。収益力を高めるために進めるのが構造改革だ。18年3月期は関連費用を600億円(従来計画は420億円)に積み増し「赤字事業の撤退や拠点見直しなど対策を強める」(平田CFO)。どれだけ成果をあげられるかが問われる。

 もう一つの課題は債務超過の解消だ。18年3月期末の自己資本は7500億円のマイナスで2期連続の債務超過になる。回避するためメモリー事業を売るが、各国の独占禁止法審査の先行きは読めない。18年3月末までに売却を完了できない可能性がある。

 メモリーを売却できれば1兆800億円の売却益が見込めるため、18年3月期末の自己資本は約3300億円のプラスに転じる。一方、売却できないと上場廃止となる。こうした状況を受け、平田CFOは「メモリーを売却できなかった場合の備えとして色々な資本政策の手法を検討している」との方針を示した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23327410Z01C17A1EA1000/