日経平均株価の終値が二十年十カ月ぶりの高値を記録した背景には、世界的な景気の回復に加え日銀などの「公的マネー」による買い支えという特殊な要因があります。この株高に心配な点はないのでしょうか。 (渥美龍太)
 Q なぜ株価がこんなに上がっているのですか。
 A 米国の株高や海外経済の好調さが日本に波及した形です。国内も自動車など輸出企業の採算を改善させる円安が続いていて、大企業の業績が好調なことなどを反映しています。
 Q 今後に不安な点はないのですか。
 A 北朝鮮情勢が再び緊迫化すれば株価を下押しする要因になりますし、米国の株価は既に割高感があるため下落に転じる可能性があります。また、中国では政治の安定を図るためにも十八日に始まる五年に一度の共産党大会に向けて景気刺激策を打ってきました。大会が終われば経済が減速する懸念も残ります。
 Q とはいえ、今の株高は歓迎すべきことですね。
 A そうとばかりは言えません。年六兆円もの株を日銀が買っているからです。先進国の中央銀行では誰もやっていない「禁じ手」です。市場関係者の間では「これまで投資家が売っても株価があまり下がらなかったのは日銀の買い支えの効果が大きい」(みずほ総研・武内浩二氏)との見方が多いです。公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も一四年に株への投資比率を倍増させています。
 Q 悪い影響が出なければ別に構わないのでは。
 A 安定運用が求められる年金を株式市場のリスクにさらすことには、多くの反対意見があります。金融緩和と呼ばれる日銀の一連の政策も、小さな銀行の経営を圧迫し、日銀自身の財務を悪化させかねない「劇薬」の側面を持ちます。株高の背後には、重要な問題が隠れているのです。
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