米インターネット通販大手アマゾン・コムが新たな配送サービスを米国内で試験的に開始したことが、6日までに分かった。「セラーフレックス」と呼ばれる新配送サービスは、出店企業の倉庫から顧客の自宅に配送するまでの作業についてもアマゾンが管理を行うというもの。こうした業務はこれまでユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)やフェデックスなどの運送大手が担っていた。アマゾンは新配送サービスの導入で、より多くの商品を2日以内に無料配送できるようにするのが狙いだ。

 在庫とコスト圧縮

 セラーフレックスでは、UPSやフェデックスといった配送事業者の利用は引き続き可能となるが、配送方法の決定については出店企業任せにせずアマゾンが管理の責任を持つという。

 アマゾンは新配送サービスの導入に伴い、数量割引によるコスト削減を見込めるほか、出店企業の倉庫に商品を保管することで自社倉庫の在庫積み上がりも回避できるようになる。UPSの広報担当、スティーブ・ゴート氏は「アマゾンは当社の重要な顧客だ。今後、一層の関係の発展を期待する」と述べた。

 関係者によれば、アマゾンは2年前にセラーフレックスをインドで開始、いずれ全米で展開できるよう徐々に出品企業向けのマーケティングを進めてきたという。同社は今年、西海岸でこのサービスを試験的に開始、2018年に広範な地域で展開する計画だ。

 アマゾンは昨年、「セラー・フルフィルド・プライム」というサービスを導入した。同サービスは、アマゾンの倉庫に商品を保管しない出店企業も、2日以内に無料で配送することを意味する「プライム」マークを表示できるというもの。出店企業はアマゾンの配送基準の達成が可能であると証明する必要があり、大半の企業はUPSやフェデックスを配送業者に指定していた。

アマゾンは買い物客が数多くの商品に迅速にアクセスできるようにするため、社外倉庫の活用に目を向け始めている。出店企業向けに保管や包装、配送サービスを提供するサービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン」では、商品は全米各地のアマゾンの倉庫に集められるが、こうした中央管理型のシステムによって特にホリデーシーズンには物流が停滞する恐れがあるからだ。

 既存網脱却の決意

 セラーフレックスという新たなプロジェクトによる物流事業の拡張は、UPSやフェデックスなどの配送網からの脱却というアマゾンの決意の表れと見て取れる。13年の年末商戦では駆け込み注文の殺到で商品の配送が遅延したことから同社は返金対応を余儀なくされ、「迅速で信頼できる配送」との同社理念をめぐって提携企業に過度に依存するリスクが露呈した。米小売り大手ウォルマート・ストアーズをはじめ、ライバル企業が配送システムを拡充する中、配送管理体制の強化はアマゾンの競争力維持につながりそうだ。

 アマゾンは個人に宅配を委託する「アマゾンフレックス」などこれまでにも配送時間の短縮とコスト削減のための試行を繰り返してきた。注文から1時間以内に商品を配達する「プライムナウ」は人気のサービスだが、年末のホリデーシーズンにはアマゾンの配送能力を圧迫するとみられる。米調査会社フォレスターは今年の年末商戦の米国のネット通販利用額が前年比12%増の1290億ドル(約14兆5500億円)に達するとの見通しを示した。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/171007/mcb1710070500009-n1.htm