ドイツでフランクフルト国際自動車ショーが12日、開幕した。独フォルクスワーゲン(VW)は2025年までに50車種以上の電気自動車(EV)を投入する方針を表明、独ダイムラーや独BMWは既存の主力量販車種の代わりとなるEVを発表した。英仏や中印がガソリン・ディーゼルエンジン車禁止の方針を打ち出すなか、EVが主役になる時代の到来を印象づけた。

何本もの電気ケーブルをつなぐパフォーマンスのあとに、舞台に音もなく現れたのはダイムラーの「EQA」。現在の入門車「Aクラス」に相当するEVだ。ディーター・ツェッチェ社長は「すべての車種で電動化モデルを選べるようにする」と強調した。

 傘下の小型車ブランド「スマート」では欧州と北米で全ての車種をEVに切り替えるほか、18年には主力の中型車「Cクラス」に相当するEQCも発表する。

 BMWは電動車専用シリーズで3車種目となる「iビジョンダイナミクス」を発表した。小型車「i3」とスポーツ車「i8」の中間に位置する中型クーペで、1回の充電で走れる距離は600キロメートルに達する。19年に発売する「ミニ」のEV版も公開し、EVの品ぞろえを25年までに12車種に広げる。

 排ガス不正で世界のEVシフトの引き金を引いたVWは、25年までに独アウディなどグループ全体で50車種以上のEVを投入する。これまで表明していた30車種から一気に増やした。

 30年までの開発などにかかる投資は200億ユーロ(約2兆6千億円)で、これとは別に電池の調達に500億ユーロ規模を費やす。

 対する日本勢では、ホンダが量産型EVのコンセプト車を初公開する。25年までに欧州販売の3分の2をEVやハイブリッド車(HV)など電動車にする。

 一方のトヨタ自動車は当面、HVに注力する。ヨハン・ファンゼイル専務役員は「主力車種では2つの仕様を選べるようにする。来年初めに具体策を示す」と表明した。燃費をよりよくしたモデルと走行性能を重視したモデルを用意できるようにする。

 各社がEV強化を必死にアピールする背景には、温暖化や大気汚染を防ぐためにガソリン車やディーゼル車への規制強化を各国が検討していることがある。

 フランスはガソリン車・ディーゼル車の販売を40年に禁止する方針だ。仏自動車大手、ルノーは自動運転EVのコンセプト車「シンビオズ」を出展した。

 自宅の電子機器と双方向に充電したり、データを交換したりする機能も想定している。EVで空気を汚す恐れがないため、自宅内に駐車することもできるという。

 中国政府もガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針で、導入時期の検討に入ったことが明らかになった。現実的な代替技術はEVかHVしかなく、自動車各社はそろってEVの拡充を打ち出している。

 英調査会社IHSマークイットのラインハルト・ショールシュ氏は「EVに投資するかどうかではなく、どのように投資するかの段階に入っている」と話す。

 従来の自動車と同様に、いかに使いやすく魅力的なEVを安い価格で提供できるかの勝負になってきた。

 ただ日米欧大手に対抗できなかった中国が自動車産業を育成しようとEVシフトに傾くのとは異なり、長くディーゼルを主力販売車種に据えていた欧州勢にとっては、急速なEVシフトは簡単ではない。

 ダイムラーのツェッチェ社長は「一晩で1つの技術を禁止するのは、環境に対しても悪影響」と規制強化の流れをけん制した。VWのマティアス・ミュラー社長は「ガソリン・ディーゼル車からEVまですべてを手がける」と強調した。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC12H2T_S7A910C1EA1000/