大手損害保険各社が、訪日外国人旅行者の病気やけがなどに対応する「インバウンド保険」の販売に力を入れている。訪日客急増の一方で、無保険の外国人が医療費未払いのまま帰国するといったトラブルも相次いでいるため、各社は旅行者本人だけでなく、受け入れ業者向けの保険も用意し、普及に取り組んでいる。

 日本政府観光局(JNTO)によると、2016年の訪日外国人旅行者は過去最多の約2404万人で、政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる20年に4000万人まで増やす目標を掲げている。

 一方、観光庁の調査によると、訪日外国人の約30%は旅行保険に加入せずに入国しているとみられる。滞在中に病気やけがで通院した場合、医療費が全額自己負担となることが未払いを助長しているとみられる。大阪府内では昨年、訪日外国人を受け入れた病院の30%で未払いが発生したとの調査結果もある。

 損保ジャパン日本興亜は16年2月、訪日外国人が入国後にスマホやインターネットから手軽に加入できる保険の販売を始めた。保険料は1日440円からで、最大1000万円の医療費を補償する。ホテルや観光施設を通じて、入国後の加入を呼び掛けている。

 一方、各社は訪日客を受け入れる側である国内事業者向けの保険も相次いで売り出している。三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損保は昨年1月、旅行会社やホテル向けに、外国人利用客が病気になったり事故に遭ったりした場合、1人につき最大100万円の医療費を補償する保険の販売を始めた。担当者は「受け入れ側にとって、サービスの向上につながる」と説明する。

 東京海上日動火災保険は、契約したホテルや旅行業者に対し、広告などの集客方法をアドバイスしたり、顧客満足度を調査したりするサービスも付加している。東京五輪に向けたさらなる観光客の増加も見据え、各社のサービス競争も激化しそうだ。【松本尚也】

 ◇キーワード・訪日外国人旅行者

 海外から日本を訪れる旅行者のことで「インバウンド」とも言う。

 宿泊や飲食、お土産の購入などで日本の経済活性化に役立っている。安倍政権は訪日客拡大を成長戦略の柱の一つに掲げ、ビザ(査証)発給要件の緩和や免税制度拡充など政策面で後押ししている。

 円安で訪日旅行の割安感が高まったこともあり、近年は訪日客が急増している。2015年は前年比約5割増の1974万人、16年は同約2割増の2404万人と過去最多を更新した。

 国・地域別では中国、韓国、台湾の順に多く、経済成長に伴う所得向上で東南アジア諸国連合(ASEAN)からの旅行者も伸びている。東京や大阪、京都以外の地方への誘致が課題となっている。


8/7(月) 22:07配信 毎日新聞
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