システム開発のリミックスポイント傘下で仮想通貨取引所を運営するビットポイントジャパン(東京・目黒)が旅行業界で提携網を広げている。「ビットコイン」など仮想通貨を航空券予約や土産物店で利用できるようにし、訪日外国人の消費を刺激する。中国などで先行して普及する仮想通貨の使いどころを日本国内に用意し、日本人の取引を増やす狙いもある。

「ビットコインがより身近なものになる。新たな旅のスタイルを示したい」――。格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションの井上慎一最高経営責任者(CEO)は強調する。ピーチはビットポイントジャパンと組み、年内にも仮想通貨による決済を導入することを5月に発表した。

 海外では投機目的のほか、自国通貨への不信感から資産の逃避先として仮想通貨を選ぶ人が増えている。ピーチの国際線利用者は7割が外国人とあって仮想通貨との親和性は高そうだ。

 2社はさらに別の果実も期待する。

 ピーチが就航する北海道や東北、沖縄の飲食店や土産店へも仮想通貨による決済システムの導入を働きかける。システムといってもスマートフォン(スマホ)などとアプリで完結する簡易なもののうえ、クレジットカードよりも手数料は安い。現金しか受け付けてこなかった商店で採用が広がれば取りこぼしていた訪日消費を拾え、地域経済は活性化する。

 こうした商店が仮想通貨建てで売上を得れば、仕入れや給与の支払いに再活用される未来がやってくるかもしれない。ただビットポイントジャパンの小田玄紀社長は「一気に実現するものではない。地方自治体などとの連携が欠かせない」と説明する。

 6月には、もっと近い将来に実現する地方と仮想通貨を結びつけるアイデアを打ち出した。インターネット旅行で急伸しているエボラブルアジアとの協業だ。

 2社でシステムを開発、今夏にもエボラブルアジアが取引するホテルや旅館へ仮想通貨の両替機能を提供するサービスをはじめる。宿泊施設の受付で旅行客自身がスマホなどでシステムを利用して両替処理をしてもらう仕組み。訪日外国人客らはそもそも両替所の少ない地方で簡単に日本円を得られるようになる。

 旅行という消費の大舞台に仮想通貨を落とし込み、中長期での普及拡大を目指す――。小田社長は「仮想通貨の利用は今はまだ投資や投機目的がほとんど。決済目的が10%、海外送金5%くらいの割合があるべき姿ではないか」と話す。「実需」における利用がすすめば相場の乱高下も減り、より多くの人が親しみやすい通貨になるという好循環を生む。

 先行する仮想通貨の取引所は公共料金や小売店の決済で足場をつくっている。ビットポイントジャパンにとっては後追いではなく競合とは異なる色を出したいのも事実。仮想通貨で旅のブレークスルーを起こせるか。社内外の知が求められている。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO18713310R10C17A7H56A00/