「日東駒専」「産近甲龍」といわれる、中堅大学の“くくり”が崩壊しつつある──。そう教育関係者が明かすのは“成り上がり”候補大学が猛追しているからだ。

 きっかけは4月、大学通信から発表された「一般入試の志願者数の増加ランキング」だ。無名の全国12の大学が、5年以上連続で志願者数を増加させ、関係者の間に衝撃が走った。

 その一つが、九州の福岡市にある福岡工業大学。11年連続で志願者数が増加。ホームページには、国公立大学との併願を促すような内容が記載され、明らかに、優秀層獲得を狙っている。福岡市の大手塾によれば、「10年前までは、九州の最難関私立の『西福APU』との併願は考えられなかったが、今はこれらとの併願者も多く、難易度もすぐ下まで上昇した」という。情報開示に積極的で、「教育の中身の可視化」が評価されているのだ。

 一方、大阪にある追手門学院大学は特に入試がユニークだ。2013年度から取り組んできた入試や学部の改革が功を奏しつつある。

 同大学は心理学部など文系学部のみの中規模大学。関西の中堅大学群「産近甲龍」に次ぐ、「摂神追桃」の一角だ。「関西では一度イメージが付くと、大学の序列を覆すのは難しい」(大阪市の学習塾)状況。その中で急速にイメージ、難易度が「産近甲龍」に接近し、“奇跡の上昇、序列崩し”とまで関係者に言われているのだ。
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秘策の一つは、14年度に導入した、「アサーティブ入試」だ。なんと高校1年生から無料で利用できる教育と相談の仕組みを提供しているのだ。具体的には、高校1〜3年生向けに基礎学力(国語・英語・英検)を高める独自のプログラムを用意。スマートフォンなどからもアクセスできる。さらに、同大学の受験とは関係のないことも大学職員に相談できる。

 これら全てを無料で利用できる上に、最終的に同大学を受けなくともよいというのだ。アサーティブ入試の志願者数はこの3年で約4倍の358人にまで膨らんだ。

 一方で、関西には「われこそは次の産近甲龍だ!」と言う同規模の強烈なライバルも多い。国際系学部新設で人気の関西外国語大学、堅実な校風と都心型キャンパスで攻める大阪経済大学、大阪工業大学、共学化で人気の京都橘大学などだ。

 追手門学院大学の川原俊明理事長・学長は「やり抜く力」をポリシーに、他大学ができないようなことに長期にわたって取り組み、地道に検証を行い、差別化を図っていきたいと意気込む。

 下克上の様子から判断すれば、これからの「勝ち組の大学」になれるかどうかは、独自性を強く出した上で、その情報をいかにうまく発信できるかに懸かっている。
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