2017年1-3月期の実質GDP成長率は季調済前期比+0.3%(同年率換算+1.0%)となった。実質GDP成長率は、5四半期連続でプラス成長となったが、この5四半期の平均の実質成長率は+1.5%(年率換算)であり、全く盛り上がりを見せない。他の先進国と比較しても見劣りがする水準である。

最近では、韓国経済の惨状を指摘する議論を耳にするが、韓国の実質成長率の平均は2%程度であるので、実質成長率という観点では、韓国に見劣りするのが現状だ。

この低迷の理由は明らかである。内需部門の不振が続いているためである。特に、2014年4月の消費税率引き上げ以降の個人消費が一向に回復の兆しをみせないことが大きい。さらにいえば、2015年以降の低迷が鮮明である。

例えば、これは、第3次産業活動指数の動きをみると明らかである(図表1)。
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また、第3次産業活動指数の中でも対個人向けサービス業(小売や外食、遊興など)の低迷が著しい。対個人向けサービス業の活動指数の水準は、2015年以降、横ばいから若干低下気味に推移している。

なかでも、2014年4月以降の「嗜好的個人サービス」の低迷が著しい(図表2)。
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個人消費低迷の理由は何か

「景気ウォッチャー調査」では、景気判断の理由についてのコメントがあり、それなりに有用だが、個人消費低迷の理由については、このコメントでは必ずしも定かではない。コメントをまとめれば、単に「消費センチメントがなぜか盛り上がってこない」と言っているに過ぎないためだ。

一般的に言って、個人消費が低迷する一番の理由は、所得(可処分所得)の減少である。ところが、可処分所得の伸び率は、過去と比較するとまだましな部類である。また、最近の雇用環境の改善から、「雇用者数×一人当たり賃金」に近い統計である「雇用者報酬」の伸びは高まっている。

2016年度の雇用者報酬の伸び率は、名目では前年度比2%、実質では同2.2%で、これは、デフレ前の1995年度の伸び率とほぼ同じである。

それでは、消費低迷の理由は何か、ということだが、可能性として最も高いのは、「貯蓄性向(可処分所得にうち、どの程度の割合を貯蓄に回すか)」の高まりである。これは、裏を返せば、「消費性向の低下」ということに他ならない。

ちなみに、消費の低迷は、「消費水準が低い高齢者の割合が上昇したことによる」という説があるが、これは誤りである。高齢者の消費水準が仮に低いとしても、所得水準も年金収入が主だとすると低いはずなので、この場合には消費性向は低下せずにむしろ、上昇するはずである。

そこで、「家計調査」における勤労者世帯(2人以上)の消費性向の動きをみると(図表3)、2015年初めをピークに、その後、急低下していることがわかる。すなわち、2015年以降の家計は、雇用環境の改善により、そこそこ、所得は増えながらも、「節約志向」を高め、所得をより貯蓄に振り向けているということになる。

日本国民は、長期化するデフレの中で、ながらく消費支出を抑えてきたが、2012年終盤以降、現在の安倍政権発足と「アベノミクス」によるデフレ脱却の機運の高まりの中で、消費性向は急上昇した。

2014年4月の消費税率引き上げ直後も、その余勢(もしくは、長年のデフレによる「倹約疲れ」も影響してか)からか、消費性向はすぐには低下しなかったが、2014年の夏場以降、急速に低下し始めた。

この間、景気回復のモメンタムは失われたが、雇用環境の改善は続いたため、全体としての賃金(統計的には雇用者報酬)の増加は続いた。だが、賃金の回復局面にもかかわらず、消費性向の低下(及び、貯蓄率の上昇)はむしろ、加速度的に進行した。

そして、消費性向の低下の推移をみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であった。

思い起こすと、ちょうど2016年6月に、安倍首相は、2017年4月に予定していた消費税率再引き上げの先送りを発表した。この決定自体は、当時の経済状況を考えると「英断」であったことは間違いない。ただ、問題は、次の消費税率再引き上げを2019年10月に単に「先送り」しただけであったという点だと考える。
以下ソース
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52012