精神障害者の求職が近年、全国的に急増している。いったん就職しても、障害が業務内容や職場環境と折り合わず、短期間に転職を繰り返す例が多いのも一因だ。青森県の八戸公共職業安定所管内でも早期退職する例が目立っており、個々の障害に応じた適切な仕事先の仲介や就職後、職場に長く定着するための支援が今後の課題となっている。

 ■就職しても…

 八戸職安における精神障害者の新規求職申込者数は、2000年代まで2桁台で推移していたが、11年度は115人、16年度には198人まで増加した。

 一方、10年代の就職率は6割弱にとどまり、短期間で離職する人も目立つ。田名部泰夫所長は「転職が重なると、障害者本人が労働意欲をその都度失ってしまう。精神障害者には若者が多く、業務がマッチすれば長く働ける人材になる」と支援の必要性を説く。

 雇用増に向け、国は18年度に障害者法定雇用率を改正する。現行制度では、従業員100人超の民間企業に対し、身体障害者や知的障害者を従業員の2・0%の割合で雇用するよう義務付けているが、これに精神障害者を加え、法定雇用率を引き上げる方向だ。

 ■念願の参画

 八戸職安は06年から、障害者就業・生活支援センターみなと(八戸市、工藤玲子センター長)などの機関や福祉施設と共同で、事前の職場実習や継続した就労についてチーム支援を展開してきた。

 16年度には、この枠組みに市内の5医療機関が加わった就労支援のモデル事業がスタート。受診者の中から新たに支援対象者を紹介したり、精神保健福祉士や臨床心理士が細かな相談に応じたりと、現場レベルでの情報共有や交流を深めている。工藤センター長は「以前から、医療機関の積極的な協力は念願だった。医療機関が“顔の見える存在”となり、敷居が低くなったのも心強い」と強調する。

 16年度は24人がモデル事業の支援を受け、うち21人の就職が決まった。八戸職安の桜庭実就職促進指導官は「高い就職率は大きな成果。今後は継続的に働けるよう、長い目でフォローすることが大事だ」と話す。

 ■オープンに

 もっとも今回、支援を予定していた枠は50人。条件に合致し、支援を受け入れたのは半分に満たなかったことになる。八戸職安に障害を申告したものの、採用に支障を来すことなどを恐れ、雇用主には伝えないよう求めてきたケースも。そもそも支援や治療を拒む人もいて、思うように支援の手が行き届かない状況にある。

 工藤センター長は「障害を理由に採用を断る企業はかなり減っている。障害をオープンにした上で、適切な支援を受けた方が就労継続につながる」とアドバイス。田名部所長も、さらに多くの医療機関に協力を呼び掛け、支援対象者を増やす方針を示した。


デーリー東北新聞社 5/1(月) 10:07配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170501-00010000-dtohoku-l02
http://www.daily-tohoku.co.jp/kiji/images/201704300P171787.-.-.CI0002_size0.jpg