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中国政府が1日、北京から車で南に2時間の場所に新たな巨大都市「雄安新区」を建設する計画を発表すると、瞬く間に「ゴールドラッシュ」がわき起こった。

 約1770キロ離れた重慶市に住むファン・ユショウ氏(36)は計画を聞いて車に飛び乗り、20時間かけて同地に向かった。発表後、一帯の住宅価格は2倍以上に上昇した。

 雄安新区には買い手が殺到した。国営メディアは、農地とプラスチック工場が連なる土地がイノベーションとハイテク主導で「エコシティー」に生まれ変わるとはやしている。中国が目指す新たな成長モデルの典型だ。

だがこれまでのところ、雄安の開発による刺激で恩恵を受けるのは旧式の企業やセクターだとみられている。モルガン・スタンレーは、向こう15年につぎ込まれる官民投資が2兆人民元(約31兆6300億円)に達すると試算している。

 建設には膨大な量の鉄鋼やガラス、セメントが必要になる。建設参加を表明した国有企業は、中国鉄道建設や中国冶金科工股フン有限公司など30社を超える。中国船舶重工集団は雄安新区に本社を移転すると発表した。

 ただ誰もが熱狂しているわけではない。既に雄安にある民間企業は、国有企業の流入で追いやられるのではないかと危惧している。中国政府の大型事業では国有企業が真っ先に恩恵を被るのが普通で、起業家が割を食うケースも多いためだ。

「深センや浦東新区の新バージョン」

 国営メディアは雄安新区について、深センや上海浦東新区の新バージョンだと吹聴する。両地区は中国経済の変化に伴って台頭。深センは静かな漁村から活気に満ちた輸出品製造工場の町に進化し、さらにテクノロジー部門の人材と民間企業がひしめく巨大都市へと変貌した。浦東は今や金融と貿易の一大拠点だ。

 一方で、都市を一から開発する他のプロジェクトは不発に終わっている。埋め立て地での910億ドル規模の深海港プロジェクト「曹妃甸」は債務がかさみ、放置された建物が目立つ。同プロジェクトの製鋼工場は赤字だ。政府が巨額を投じた天津市浜海新区でのプロジェクトは停滞している。浜海新区も曹妃甸も雄安に近い。