泊まる場所がなくて、廃村に泊まったことがある
数軒あったと思われる家屋は朽ちていて、一面田んぼ(の跡)だった
小川のそばにテントを張った
はるか向こうの田んぼに何か立っているのが気になった
オペラグラスを持っていた友人が
「なんだ、ただの案山子だよ」
夕方、テントの外で飯にした
おしゃべりに夢中になっていたが、ふと見回して違和感を覚えた
「なあ、あの案山子、もっと遠くなかったか」
先に友人が気づいた
来たときには何か分からんくらい遠かったのが、
今は遠いことは遠いが、肉眼でも案山子と分かるくらいの距離だった
「うあっ」
オペラグラスを取り出した友人がのけぞった
「どうした?」
「いや、あの案山子さっきは別の方に向いていたと思うんだよな。
 でも、今は顔がこっち向いてる・・」