弦巻こころ

弦巻財閥の一人娘として生まれ周囲から手厚く育てられてきた。
弦巻家の淑女として相応しくあるために勉学や稽古に縛られる日々を送り、友達と遊ぶ時間もなく、彼女はいつも一人だった。

中学を卒業しようかといった頃、急な胸の痛みに襲われ病院へ緊急搬送された。
精密検査の結果、突発性の心臓病を患っていたのだ。
そして、医者の口から宣告されたのは、15歳の少女にはあまりに残酷な言葉だった。

余命 3年の命 ーーー

突然突き付けられた非情な現実に絶望するかと思えば、意外にも彼女の心は穏やかだった。
まるで、辛い人生から解き放たれる事への安堵を彷彿とさせる表情をしていたのだ。

高校に進学し、彼女は一大決心をする。
【残りの人生で楽しい事をいっぱい見つけよう。】
まるで失った時間を取り戻そうとするかのように奔走した。生まれて初めて自らの足で走り出したのだ。

いつしか楽しい事を探すのが日課となった頃、街へ繰り出した彼女は、楽器店の前でスネアドラムを両手に抱えてオロオロしている水色髪の少女に出会った。