2019.05.17 16:00

 ここ数年、トレンディエンジェルやバイきんぐの小峠英二など、「ハゲ」を売りにする芸人の活躍が際立っている。そして今や、「ハゲ」を隠さず前面に出していくのは、芸人だけではないようだ。

 街中を見れば、かつては薄毛をごまかす手段の王道だった、通称“バーコードヘア”も絶滅危惧種。薄毛だとしても、隠さないでそのままか、潔くスキンヘッドというように、男性たちは以前よりも堂々とさえしているように見える。

 その影響からか、男性用かつら市場も打撃を受けている。アデランスは業績不振から2017年に東証1部の上場を廃止。同社の業績は2000年代初頭にピークを迎えて以降低迷が続いている。女性用かつら市場が拡大している一方で、男性用かつら市場は縮小傾向にある。薄毛男性の「バーコードヘア離れ」どころか「かつら離れ」も進む中、彼らはどう対応しているのか、その心理と実情を探ってみよう。

 ウェブデザイナーの40代男性・Aさんは、30代の前半から、薄毛の進行を気にするようになったという。

「最初はとにかく周りの目が気になってしまって、近くで女性が笑っていると、『俺のことかな』と思うほど悩みは深刻でした。とはいえ、バーコードヘアみたいな、ダサいうえにハゲをちゃんと隠せもしない髪型をするのもイヤだったので、とりあえずシャンプーを変えたり、風呂上がりにアロエで頭皮を潤したり、自分にできそうな対策を片っ端からやりました。その後、薄毛が目立ちにくいように金髪にしました。職業がクリエイティブ系だったせいもあって、業界にはもともと髪型は自由な人が多く、幸いでした」

 薄毛が進行するうちにかつらや発毛、育毛の選択肢を検討し始めたAさんだったが、あるハリウッド俳優が出演する映画を見てから、考え方が変わったと話す。

「ニコラス・ケイジ、かっこいいですよね。薄毛がむしろメリットに思えるようなオシャレさやそのオーラに魅了されました。日本人は“薄毛は恥”みたいな感じで萎縮しがちですけど、極端な話、ハゲも個性。ハゲた自分も自分なので、堂々と潔く勝負しようと思いました」(Aさん)

 また50代男性のBさんは、スキンヘッドにしてダンディ路線を追求。昼休みに会社のビル周りを走ったり、ジムで体を鍛えたりするなどボディメイクにも妥協せず、服や帽子、眼鏡などファッションにも気を遣うようになった。その結果はこうだ。

「以前より、あまり薄毛を意識しなくなりました。体を鍛えた副産物として、ずっと悩まされていた腰痛や肩こりも緩和され、仕事にも集中できるように。女性部下にも、今のほうが良いと好評です」(Bさん)

 Bさんのように、薄毛に悩み始めたらいっそのことスキンヘッドにする人は少なくない。こうした意識の変化を、髪のプロである美容師はどう見るか。ベテラン美容師のCさん(男性)が語る。

「スキンヘッドにする人がじわじわと増えている実感は確かにあります。清潔感を重視したいというお客様からのリクエストが多いですね。ただ、スキンヘッドの維持にはこまめなお手入れが欠かせないので、そこは事前に覚悟しておくべきでしょう」

 薄毛を必死に隠すのではなく、堂々と晒すほうがいい、と考える人は、これからも増えていくのかもしれない。

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