ドアを開け、真っ暗闇の部屋の電気をつけようとしたその瞬間、突如クラッカーが鳴り響く。「おめでとう!」。
明かりのついた室内はリボンとバルーンで飾りつけられ、中央のテーブルには巨大なケーキと豪華な料理…。

7月中旬のある夜、都内の超高級ホテルの一室で、前田歩さん(仮名・35才、IT企業勤務)の“サプライズ誕生日パーティー”が開かれた。集まったのは30代前後の男女15名。
皆がシャンパン片手に祝福のメッセージを述べると、彼は嬉しそうにはにかんだ。

宴の後、前田さんはパーティーの写真をフェイスブックやインスタグラムに投稿。すると、通常の50倍以上の「いいね!」がついた。

だが、実際には前田さんとお祝いしたパーティーの参加者に面識はなく、二度と会うことはない──。

この1週間前、前田さんはある業者を訪れていた。そこで相談したのは、自分の誕生日パーティーの段取りや、集まってほしい友人の人数、雰囲気、服装などの詳細だった。

相談を受けた業者は依頼通り“友人”男女15人をパーティーに派遣。冒頭のパーティーは“やらせ”だったのだ。

「とにかくSNSで『いいね!』が欲しい。そんなぼくにぴったりのサービスでした」

そう話す前田さんの承認欲求を満たしたのは、「リア充代行業者」。今、全国各地から依頼が殺到しているという。

今回、スタッフを派遣した「ファミリーロマンス」の石井裕一社長が言う。

「もともと一日恋人役をやってもらうレンタル彼氏、レンタル彼女の派遣をし、好評を得ていたのですが、昨年春ごろから『SNSにリア充感のある写真をアップしたいので、
人を派遣してほしい』との依頼が増えたので専用のサービスを始めました。
依頼者の希望するシチュエーションに応じて“スタッフ”を1人につき2時間8000円で派遣。場所代や飲食代はすべて依頼者に負担してもらいます」

冒頭の前田さんはフルコースの料理や会場となった部屋、ケーキやクラッカーを全て自分で用意。
一晩で50万円以上使い切った計算になる。だが、高額な料金にもかかわらず、依頼者の5割近くがリピーターだ。

その秘密は、少しでも「いいね!」が稼げるように現場でスタッフが写真をシェアしたり、
おしゃれに見えるような撮影方法をアドバイスしたりするなど、サービスが充実しているところにあるという。

例えば、28才OLが浜辺での撮影を依頼した際は、同年代の男女5名を会社が派遣。
お台場海浜公園でビキニ姿のスタッフがOLとはしゃぐ写真を撮り、その後はバーベキューゾーンで肉を焼くところやビールをかけてふざける様子を撮影した。

さらに全員が私服に着替えて最寄りのアミューズメントパークに行き、「仲よし」と書き込んだプリントシールを撮影したり、UFOキャッチャーをする模様を写真に収めたりした。
OLはこれらの写真を「別の日の出来事」としてSNSに順次アップした。

32才の独身男性は『ワンピース』『ドラゴンボール』が大好きで、アニメに出てきそうな「秘境」を一緒に訪れる友人を依頼。東
京と山梨の県境にある山奥でスタッフとともに「へびに遭遇して戦う」「秘境の滝にたどり着く」などの写真を撮ってSNSに上げると、普段は3しかつかない「いいね!」の数が100を超えた。

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12180-603607/
2017年08月10日 07時00分 NEWSポストセブン