新 型 コ ロ ナ は “ 神 が 与 え た 罰 ” ? せ め ぎ あ う 科 学 と 宗 教

1300年近く前のこと。
時の日本の指導者は相次ぐ飢きんや感染症による社会不安を鎮めようと奈良に大きな大仏を作りました。

そして時代は令和。ネットには再び「大仏建立しかない」という声も見られます。
感染症が広がり多くの人が亡くなってきた歴史の中で、人類はたびたび宗教に救いを求めてきました。
しかし、一部の国では、今、宗教が新型コロナウイルスを拡散させるリスクとなっています。

宗 教 行 事 が 感 染 拡 大 の リ ス ク に
ことし4月から5月にかけては主要な宗教行事が続いています。
ユダヤ教の過越祭(ペサハ)、キリストの復活祭(イースター)、そしてイスラム教の断食月(ラマダン)です。

こうした宗教行事では大勢の人が密集して祈りをささげます。
韓国では新興宗教団体の教会で起きた集団感染が初期の感染者増加につながりました。

マレーシアでも3月初めのイスラム教の宗教行事がきっかけとなり、感染が広がったと見られています。
神経をとがらせる各国は宗教界と緊密に連携して、教会やモスクなどの祈りの場を閉鎖する措置などを打ち出しています。
宗教を通じた感染拡大を防ぐことができるのか。
この課題に直面した国の1つが中東のイスラエルでした。

ス ピ ー デ ィ ー だ っ た 隔 離 政 策
イスラエルの新型コロナウイルスへの対応は世界を見渡しても迅速かつ強力です。
国内の死者がゼロだった3月9日にはすべての海外からの渡航者に隔離措置、その後すべての外国人の入国を拒否。
さらに、ふだんは敵に用いるサイバー技術を使い、感染者や感染疑いがある人を徹底的に追跡しました。

それにもかかわらず、イスラエルでは感染の拡大が4月中旬まで続きました。
5月5日現在、確認された感染者の数は1万6000人以上、亡くなった人は230人を超えました。
イスラエルの首相みずから「やりすぎなくらいの対策」と語る強硬策をとったにもかかわらず
封じ込めができなかったのは、そこに「宗教」の壁が立ちはだかったからです。

ウ イ ル ス 拡 散 は “ 人 間 の 行 動 の 報 い ”
感染者の増加は「超正統派」と呼ばれる敬けんなユダヤ教徒のコミュニティーで起きました。
黒い衣服に身を包み、ユダヤ教の戒律を厳格に守る超正統派は、宗教学校で教えを学ぶことにいそしみます。
テレビやインターネットは所有や使用が禁止されているため、多くの情報から切り離された人々です。

イスラエルの超正統派の間では、非科学的な考えや偏見が広がっていました。

それを支えたのが著名な聖職者たちが示した見解です。
「新型コロナウイルスは、神が自然の摂理に逆らう者に与えた罰だ」
「ウイルス拡散は、人間が野獣のような行動を取った報いだ」といった内容でした。
これらの発言からは感染症を「神罰」だと見なす風潮が伺えます。
「科学を拒否する」態度は、教えに忠実な自分たちにとってウイルスの感染は無縁の出来事だという油断を生んでいました。