【ともに生きる やまゆり園事件から】 2016年08月08日

 ○ 冷 め 切 っ た 風 潮  表 面 に

 「起こるべくして起こってしまった」。

和光大学名誉教授(79)は、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件を知った時、そう感じたという。
知的障害がある三女(39)と同居している。

 「障害者は不幸を作ることしかできません」「日本国が大きな第一歩を踏み出す」。

容疑者(26)は、衆院議長に宛てた手紙にそう書いて、重度障害者を次々と刃物で殺傷したとみられている。

同教授は「今の社会にとって、『正しいことをした』と思っているはずです」。
そして、「共感する人も必ずいるでしょう」と言った。

「 いまの日本社会の底には、生産能力のない者を社会の敵と見なす冷め切った風潮がある。
  この事件はその底流がボコッと表面に現れたもの」。

 不幸を生み出す障害者を代わりに殺してあげたというような代行犯罪に対しては、はらわたが煮えくりかえるような怒りを感じている。

「命とは何かを問うとき、その人の器量が問われる。障害者はいなくなってしまえばいい、というのは浅い考えだ」

 娘は、言葉を発することが出来ない。自分で食事ができず、排泄(はい・せつ)の世話も必要だ。

 「 命は尊いとか、命は地球より重いといった 『 きれいごと 』 は言えない。
 『 あの子がいなければ 』 と 『 あの子がいてくれたから 』 という相いれない気持ちが表裏一体となり、日々を過ごしている 」

そ の 日 々 を 「 一 定 ( い ち ・ じ ょ う ) の 地 獄 」 と 表 現 す る 。

「 地 獄 で あ る こ と が 普 通 」 に な っ て し ま っ た よ う な 生 活 だ と い う 。

「 そ の 生 活 の な か で 、

” ふ っ と 希 望 が 湧 く 瞬 間 が あ る ”  。

理 由 は 分 か ら な い 。 命 と は 、 分 か ら ず 、 は か れ な い 価 値 を 持 つ 」


憂慮するのは、超高齢社会に突入した日本社会が迎える窮状だ。
2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、認知症患者が700万人に達するとみられている。

尊厳死や安楽死といった「死」への考察、「IQ20以下は人ではない」とする米国の生命倫理学者の考え。
障害者を社会の中でどう受け入れていくのか、親として考え続けてきたことが、一層問われていくと思っている。
      ◇
 「津久井やまゆり園」で起きた事件をいったいどう考えたらいいのか。随時掲載します。

企画特集 1【ともに生きる やまゆり園事件から】
http://www.asahi.com/area/kanagawa/articles/MTW20160808150150001.html