楽天の「世界初の新技術」は実用化できるか
 なぜ安くできるのか。携帯大手3社は、毎年4000億〜5000億円を設備投資してきた。一方、楽天は基地局整備の費用を6年間で総額6000億円弱としている。新技術を用いれば初期コストで3割、運用コストで4割が減らせるため、利用者に安く提供できるという。

 だが、こうした楽天の現状に、監督官庁の総務省は不満を募らせている。

「三木谷氏の主張に基き、昨年から菅義偉官房長官や総務省は、大手3社に料金見直しを迫ってきた。しかし、楽天はいまだに具体的な料金を提示していません」(前出・通信業界関係者)

 楽天が「仮想化ネットワーク」と呼ぶ新技術は、通信網の管理を専用サーバーではなく、インターネット上で行うという。

「仮想化技術を全面採用するのは楽天が世界初で、通信の安定性が確保できるかどうかは未知数。あと半年で実用化できるのか甚だ疑問です」(同前)

 実現しなければ携帯料金の引き下げ圧力はなくなり、菅氏や総務省は立場を失うだろう。通信業界は未知のイノベーションの行方を注視している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年9月19日号)