鶏肉や牛肉などに付着する「腸管出血性大腸菌(O157、O111)」や「カンピロバクター」 には十分な注意が必要

" 突然体が動かなくなる病"

東京で一人暮らしをしている50代の健康な男性。ある日、歯を磨こうとしたときに異変が起きた。

指に力が入らず、水の入ったコップが持ち上げられない。翌朝目覚めると...両手足に力が入らない。
救急車を呼ぶが、その間にもどんどん力が入らなくなる。そして急速に病状は進行し、立てなくなった。
運ばれた病院でMRI、CTスキャン血液検査、髄液検査等様々な検査が行われた。
診断結果は、ギランバレー症候群だった。

ギランバレー症候群とは、主に筋肉を動かす運動神経が攻撃され、手足に力が入らなくなったり、腱反射がなくなる、免疫にかかわる神経疾患。
原因は細菌やウイルスによる感染最も多いのは、生焼けや生の鶏を食べた時に感染する、カンピロバクターという細菌に感染した時。

通常、人は菌やウイルスに感染すると体の中で抗体ができる。
抗体は細菌に結合して、細菌を攻撃するなどして菌を消滅させるのだが、
カンピロバクターという菌の一部に、末梢神経の表面と同じ構造が存在する。
すると、本来は菌を攻撃するはずの抗体が、間違って末梢神経を攻撃してしまい
これによりギランバレー症候群を発症してしまう。

別の男性もギランバレー症候群になった。大阪の40代の健康な男性。
職場について間もなく、夏なのに手が冷たく動かなくなっていった。
突如ギランバレー症候群を発症した2人の男性。

医師に「2週間以内に何か生ものを食べませんでしたか?」と尋ねられた東京の男性。
男性が思い当たるのはただ1つ。
病気を発症する2週間ほど前、忘年会で食べた鍋だった。
鍋の具材の鶏もも肉をかじると、中までちゃんと火が通っていなかったが、なんとなくそのまま飲み込んだ。
その3日後から、激しい下痢が1週間も続いたという。

一方、大阪の男性が食べたのは鶏の刺身。
男性が食べたのはわずか2切れだったが、4日後に39度の高熱と激しい下痢倦怠感と頭痛に襲われた。
2人が共通して食べたのは、十分に加熱されていない鶏肉だった。
" 鶏肉に潜むカンピロバクターの恐怖"

鶏の腸内にはカンピロバクターが多く存在し、処理される間に鶏肉に菌が付着してしまう。

" 壮絶な病との闘いは今も続く"
だが東京の男性は、症状が悪化していき壮絶な闘いが始まった。
首の筋肉が麻痺し、赤ちゃんのように首が据わらない。
神経が侵され、幻視も起きた。

病室のカーテンの上の格子が原稿用紙のマス目のように見え、お経のように知らない漢字で埋められたという。
さらに、ベッドの周りの医療器具が生き物のように見えた。

だが意識はしっかりしていて、現実ではないと理解はできる。
その日の夜には胸の筋肉が動かなくなり自発的に呼吸ができなくなった。

ギランバレー症候群で怖いのは自律神経を攻撃されること。
自律神経は血圧や脈拍をコントロールしているため、命にかかわる事も。
東京の男性の脈拍は150以上も打ち、不整脈も起こした。この時、家族は死を覚悟した。
何とか命はつないだものの今度は喉の筋肉が麻痺し誤嚥が起きた。
何度も誤嚥し肺炎を起こす熱と胸の痛みは1か月間も続いた。
寝返りがうてないので、床ずれを防ぐため3時間ごとに体の向きを変えてもらわなければならない。
およそ3か月の入院で体重が20kgも落ちた
口から食事をとれるようにスポイトで1cc、1滴を飲みこむ練習から始めた男性。

そして発症から間もなく3年。
東京の男性は現在、手の先にまだ麻痺が残っているという。