極低温冷却材を開発 ヘリウム使わず磁性体で―原子力機構

 日本原子力研究開発機構は12日、供給が不安定な「ヘリウム3」を使わずに、絶対温度で0度(セ氏零下273.15度)近くまで冷却できる材料を開発したと発表した。
 この材料は、レーザー光源の結晶への添加物やガラス着色料などとして使われる希土類元素「イッテルビウム」の磁性体。

 ドイツのアウクスブルク大との共同研究で、同国の企業が実用化を目指しているという。
 現在のコンピューターより飛躍的に計算能力が高い量子コンピューターの冷却などに需要があると期待される。
 論文は英科学誌コミュニケーションズ・マテリアルズに掲載される。

 原子力機構の常盤欣文研究副主幹によると、磁性体は微小な磁石の集合体で、それぞれの磁石が揺れる運動エネルギーにより周囲の熱を吸収して冷却する。
 通常は極低温に近づくと、微小磁石が整列して揺れが止まってしまうが、イッテルビウムの磁性体は粒子よりも波の性質が表れる量子効果から、微小磁石が整列しない。
 試作装置では絶対温度で0.04度まで冷却できた。

時事通信 2021年04月12日19時16分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041200981