京都大学の奥野恭史教授らは3日、世界最高の計算速度を誇る理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を用い、新型コロナウイルス感染症の治療薬の候補となる物質を数十種類発見したと発表した。細胞内でウイルスの増殖を妨げる可能性がある。今後は細胞を使った実験などで効果を確かめる方針だ

理研副プログラムディレクターを務める奥野教授らは、富岳の高い計算力を使い、既存の薬剤2000種類以上を対象にシミュレーション(模擬実験)を実施した。ウイルスの増殖に関係するたんぱく質にくっつき、その働きを妨げる効果がどの程度あるかを調べた。

この結果、治療薬として有望だと考えられる数十種類を絞り込むことができた。この中には、新型コロナ向けに世界で臨床試験(治験)が進む薬剤が12種含まれていた。いずれも寄生虫の薬である「ニクロサミド」や「ニタゾキサニド」などで、ニタゾキサニドは既に米国やメキシコで治験が進行中だ。

また、日本の製薬会社が特許を持っている物質も、シミュレーションではよい結果が出たという。奥野教授は「富岳の計算でリストアップした中に、治験が進行中の薬剤が含まれていたことは、計算が正しいことを示唆している」と話す。

今後は細胞を使った実験で、薬剤の効果を詳しく調べる。製薬会社や研究者と協力し、臨床研究や治験についても検討する考えだ。

富岳はスパコンの計算速度を競う世界ランキング「トップ500」で6月に首位となった。2011年に首位だった「京(けい)」が1年かかる計算を数日でできる計算能力をもつ。当初、21年から運用する予定だったが、新型コロナ研究のために今年4月に前倒しで使い始めた。

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/52/0948613f72d7c41464d1cdd16a3e5422.png

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61137980T00C20A7EA5000/