2019年11月1日 21:00 
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【11月1日 AFP】かつて雄大と呼ばれたメコン(Mekong)川は今、タイ東北部では浅く薄汚い川に成り果てている。記録的な低水位の原因は、干ばつとこのほど完成した上流の水力発電用ダムだとされている。

 ラオスで10月29日、総工費44億7000万ドル(約4830億円)のタイが所有するサヤブリ(Xayaburi)ダムが完成した。だが、サヤブリダムの建設は、メコン川の魚の回遊、堆積物、水位だけではなく、数千万の人々の生活に影響を及ぼすと長年警告されてきた。

 ラオスと国境を接するタイ東北部ルーイ(Loei)県の一部では、以前は1キロあった川幅が、今ではわずか数十メートルになり、岩に囲まれた泥の水たまりのようになってしまっている。上空から見るとラオス側でもタイ側でも川岸が広がり、細い筋状の水が流れているだけで、漁場も限られてしまっている。

 漁師らは、今年はモンスーンが弱い上に、約300キロ北方にサヤブリダムができたせいだとしている。

 内陸国で貧しいラオスは、「アジアのバッテリー」となることを目指している。米環境団体インターナショナル・リバーズ(International Rivers)によるとラオスでは現在、メコン川の主な支流で44か所の水力発電所が稼働しており、さらに46か所が建設中だ。

 メコン川流域の国際間の水利関係を管理する国際機関「メコン川委員会(Mekong River Commission、MRC)」の発表によると、6月から10月までの水位は約30年間で最低水準だった。

 MRCによると、ラオスの首都ビエンチャンの対岸に位置するタイ東北部ノンカイ(Nongkhai)県では、10月29日に水位が平均よりも数倍浅い約1メートルまで落ち込んだ。

 MRCはAFPの取材に対し、メコン川全体の水位は「この時期の最低水準を大幅に下回っており、さらに減少すると予想される」とし、「間もなくやって来る乾期が心配だ」と述べた。

■「なぶり殺し」

 メコン川は源流をチベット高原に発し、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れており、その沿岸で漁業や農業を営む数千万人の生活を支えている。

 専門家らは、中国とラオスのダム建設熱がメコン川の枯渇を悪化させたとしている。「これがメコンをなぶり殺しにしている」と、「The Last Days of the Mighty Mekong(雄大なるメコン川の最後の日々)」の著者ブライアン・エイラー(Brian Eyler)氏は述べる。同氏は、メコン川下流は来年再び雨が降るまで「危機的状況」になると警告している。

 発電量1285メガワットのサヤブリダムを開発したCKパワー(CKPower)は、タイの建設大手チョーカンチャン(CH Karnchang)の子会社で、電力の大半はタイに輸出される。だが、タイの人々はダム建設に反対していた。

 CKパワーはAFPの取材に応じなかった。

 同社はクリーンで持続可能なエネルギーを推進すると宣伝している。だが、同社は7月、サヤブリダムによってタイ東北部のメコン川の水が枯渇するかどうかを調べる試験の実施を拒否した。

 映像は上空から撮影したメコン川と漁師ら、10月31日撮影。(c)AFP