2019.10.12
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/101100587/

 現在、タイ中部のバンサパンヒン近郊の土地は、薄い赤みを帯びた土で覆われ、地元農家がトウモロコシやキャッサバを育てている。しかし、1億1300万年以上前、この地域は氾濫原で、サメのような歯を持つ恐ろしい恐竜が支配していたことがわかった。

 今回発見された新種の肉食恐竜は「サイアムラプトル・スワティ(Siamraptor suwati)」と名付けられ、2019年10月9日付けで学術誌「PLOS ONE」に論文が発表された。この恐竜の化石は、7.5メートルほどある全身の各部が見つかった。カルカロドントサウルス類に属するが、東南アジアでこれほど状態の良い化石が見つかったのは今回が初めて。肉食恐竜の主要グループが、太古の時代にどのように各地に広がっていたのか、また新たな事実が加わることになる。

「タイで見つかった恐竜の中でも、重要な発見と言えます」と、論文を査読した英エジンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサット氏は電子メールで答えている。

 タイ、ナコンラチャシーマー・ラチャパット大学の研究者ドゥアンスダ・チョクチャロムオン氏が率いる研究チームは、見つかった骨を詳しく調べ、気嚢(きのう:呼吸器官)を持つ骨格であることを発見した。おそらくより速く呼吸するのにも役立っていたと考えられる。

「ダイナミックで動きの速い、どう猛な恐竜だったのでしょう」とブルサット氏。

ティラノサウルス以前の支配者はどこまで分布

 Tレックスなどの巨大なティラノサウルス類が出現するより数千万年も前、地球を支配していたのが、別の大型肉食恐竜「アロサウルス」の仲間だ。この重量級の肉食恐竜の中に、白亜紀の大半にわたり食物連鎖の頂点に君臨したカルカロドントサウルス類がある。今回見つかった新種恐竜もこの仲間と考えられている。 (参考記事:「T・レックス以前の“恐竜王”を発見」)

「元々、小さかったティラノサウルス類が巨大化して頂点捕食者になったのは、カルカロドントサウルス類の衰退があったからこそです」とブルサット氏は話す。 (参考記事:「小柄なティラノサウルス類の新種発見、人間サイズ」)

 カルカロドントサウルスの仲間が最初に見つかったのは1914年のこと。エジプトのサハラ砂漠で、ドイツの古生物学者エルンスト・シュトローマーが資金提供した調査隊が、ステーキナイフのように鋸歯状の恐竜の歯を見つけたのだ。その恐ろしい歯は、ホホジロザメを含むホホジロザメ属(カルカロドン)の歯を思い起こさせ、シュトローマーは1931年、この恐竜をカルカロドントサウルス・サハリクス(Carcharodontosaurus saharicus)と命名した。

(続きはソースで)