−構造変化を0.05ナノメートルの精度で捉える−

2019年05月13日
 白川昌宏 工学研究科教授、池谷鉄兵 首都大学東京助教、伊藤隆 同教授らは、生きた真核細胞の中でたんぱく質の立体構造を詳細に解析する技術の開発に成功しました。

 本研究グループは、最新の核磁気共鳴分光測定法(NMR法)と情報科学的解析技術を駆使し、測定機器に細胞の生命維持装置を付加する工夫を重ねた結果、生きた真核細胞(昆虫培養細胞Sf9)内に存在するたんぱく質の立体構造を原子レベルの分解能で観測することに成功しました。このうち3種のたんぱく質については、真核細胞では初となる高分解能(0.05ナノメートルの精度)で立体構造を決定することができました。

 この結果、従来の試験管内の解析結果とは異なり、細胞内の環境ではたんぱく質の立体構造が変化している現象を捉えることに成功しました。

 本研究成果で確立した技術を発展させることで、真核細胞を用いた疾患発症メカニズムの分子レベルでの理解や、疾患関連たんぱく質の構造変化を細胞内で直接捉えることによる薬剤スクリーニングなどの応用研究で大きな進展をもたらすことが期待されます。

 本研究成果は、2019年4月1日に、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に掲載されました。

図:Sf9細胞内で決定されたたんぱく質の立体構造
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/images/190401_1/01.jpg

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/190401_1.html