■ゲノム編集した患者さん由来iPS細胞・ヒトiPS細胞ストックともに成功−

 南川淳隆 iPS細胞研究所特定研究員、金子新 同准教授らの研究グループは、ヒトT細胞由来iPS細胞を用いてがん細胞を攻撃するキラーT細胞を作製し、その性質を調べました。その結果、作製した再生キラーT細胞は生体内のキラーT細胞により近い性質を持つ一方で、DP胸腺細胞という前駆細胞の段階において、生体内での発生同様にT細胞受容体の再構築が起こる、つまり余計な再構築が起こるために本来の抗原を特定する能力が低下することが分かりました。

 そこで、本研究グループは、T細胞受容体再構築を引き起こす遺伝子をヒトT細胞由来iPS細胞においてゲノム編集で除外することにより、余計なT細胞受容体の再構築を防ぐことに成功し、生体内・外においてがん細胞に対して有効な攻撃をしかけるキラーT細胞を誘導できることを確認しました。

 また、一方で、T細胞に由来しないiPS細胞であるHLAホモiPS細胞ストックのiPS細胞を用いる場合、抗原情報を備えたT細胞受容体を導入するのみで抗原特異性の安定したキラーT細胞を作製することが出来ました。T細胞受容体を安定化させて抗原特異性を維持することは、治療効果の向上のみならず副作用の回避にも有用です。これらの研究成果は、iPS細胞由来T細胞を用いたがん免疫療法の実用化に向けた安全性と有効性を示す結果の一つとなります。

 本研究成果は、2018年11月16日に、米国科学誌「Cell Stem Cell」のオンライン版で公開されました。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/images/181116_1/01.jpg

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/181116_1.html